Bonne(ボンヌ)のブログ

死別者ですが余生は少しでも楽しく

十三代目團十郎・八代目新之助襲名披露公演 ~その3~

  歌舞伎の記事ばっかり続いていてスミマセン。今回で終了予定です。これを書き終え
 ないと、次に進めないような気がして・・・(気のせいや。by妻)


  襲名口上が終わると、35分間の長い休憩です。オッサンはあらかじめ歌舞伎座3階の 
 食事処「花籠(はなかご)」で提供する襲名披露のお膳を頼んでおいたので、そそくさ
 とそちらへ向かいます。オッサンの座席は二等席で1階の最後方のため出口に近いので
 混み合う前にエスカレーターで3階に向かいました。
  受付で予約したことを告げると、指定された場所に案内されます。そこには既に御膳
 が用意されていました。お品書きを兼ねた襲名披露写真のカードが付いています。

  この襲名披露御膳はいつもより高めの4,000円もしますが、まぁ記念公演だから仕方が
 ないです。(なんだかんだ言ってそうやって高いものを買わされているオッサン。by妻)

  さすがに中身はゴージャスです。これにお椀がつきます。高いけれど、美味しかった
 のでOKです。まぁ歌舞伎座に芝居を見に来るような人は、舌が肥えている人が多いの
 でしょうね。いい加減なものは出せませんからね。
  そうそう、3階にはもう一つ食事処があります。それは「東京吉兆」歌舞伎座店です。
 紛うことなきあの老舗高級料亭の支店なのですが、メニューは懐石6,000円のみ。しかし
 幕間の35分で慌てて食べるのはちょっともったいないような気がしますけどね・・・


  さてオッサンは約20分で食事を済ませて(アルコールはまだNGなのでした)、一階
 に戻って売店に立ち寄ります。(いっそがしいの~、貧乏暇なしや・・・by妻)
  ここでは毎回、その月の上演演目にちなんだお菓子やグッズを販売していて楽しいの
 ですが、今回は團十郎&新之助襲名記念というハク?もついていますから、かなり強気
 の商売のようです。目移りしちゃうね~

     

  しかしお買い物を楽しんでいるのは圧倒的に女性が多く、おば様たちやお嬢様方が
 いろいろ品定めをしているところを、目障りなオッサンが一人うろちょろ・・・(笑)
 襲名記念金メダルは、なんと130万円するそうです。うひゃぁ~、誰が買うんや。
 13代目にちなんで、130万円で13セット限定だそうです。もう一回、ひえぇ~!
 でもロマネ・コンティの方が高いな・・・どっちにしてもオッサンには関係ない話や。
   
  さて休憩終了5分前のベルが鳴りましたので、座席に戻ります。いよいよ、本日最後
 の演目:歌舞伎十八番の内、「助六由縁江戸桜(すけろくゆかりのえどざくら)」です。
  幕があくと江戸の遊郭吉原随一の「三浦屋」の店先です。花道の奥と舞台の奥からは
 花魁道中の若衆が持つ杖(鈴)の音が響き渡り、ほどなく花道と舞台奥から花魁道中が
 姿を見せます。ストーリーに関係ないのに随分気を持たせる演出ですが、こうしてだん
 だんと吉原らしい雰囲気を盛り上げていく感じです。続いて、三浦屋自慢の花魁たちが
 姿を現し舞台は一挙に華やいできます。そしてほどなくして花道からは三浦屋のナンバ
 ー・ワン「揚巻」さんが登場します。ほろ酔い加減の揚巻さん、外出していると馴染の
 お客さんたちに一杯勧められて断れきれなかったと言っております。さすが人気者!
  そして、続いては三浦屋のナンバー・ツゥ、揚巻さんの妹分?の花魁「白玉」さんが
  花道から優雅に登場。おや、しかしその後ろに変なオッサン連中がいます・・・そう、
 意地の悪い?敵役の「髭の意休(ひげのいきゅう)」の登場です。いかにも悪者ってい
 う感じですわ。(左から二人目が髭の意休。花魁が白玉さん。)
  そういえば23日から数日間だけ、この白玉さんを坂東玉三郎さんが演じますが、その

 公演日は真っ先に売り切れていました。実は現役最高の人気者は玉三郎さんなのです。  

  この髭の意休、揚巻に近寄ると、なれなれしくも無礼にも、揚巻さんの惚れ込んで
 いる(間夫の:まぶの)助六の悪口を言い始めます。「奴はやたらと喧嘩を吹っ掛けて
 腰のあたりをまさぐっている、ありゃ泥棒だ」と。それを耳にした揚巻さん、聞き捨て
 ならじとばかりに反撃に出ます。
  「これから揚巻のぉ、悪態のぉ、はつ~ねぇ(初音)~!」 よ!待ってましたぁ! 

  「もし、意休さん。お前と助六さん、こう並べて見るときは、こっちは立派な男振り、
 こっちは意地の悪そうな、たとえて言わば、雪と墨(すみ)。硯(すずり)の海も鳴門
 (なると)の海も、海という字は一つでも、深いと浅いは客と間夫(まぶ)〜。間夫が

 無ければぁ女郎は闇ぃ〜。暗がりで見ても、お前と助六さん、取り違えてよいものかい

なあ。ホホ、ホホホホホ・・・」
  ※わたしにとっちゃぁ、意休さんはただの客。助六さんはぞっこんほれ込んだ男です
   からねぇ、間違えてもらっちゃぁ困りますねぇ・・・ということですわ。(まるで
  オッサンと小栗旬さんの比較みたいやったのぉ~、「見てくれ」の話やが。by妻)
  しかし揚巻さん、そら身も蓋もないがな。なんという根性と度胸のある女じゃ。


  意気軒高の揚巻さんが舞台奥に引き上げると、ようやくにして我らがヒーロー、主人
 公の助六さんが花道から登場します。(モーツァルトのピアノ協奏曲みたいに、主役の
 ピアノがいつまでたっても出てこない感じやったな・・・by妻) 
  鯔背(いなせ)な江戸のダンディ! 男伊達の花川戸助六とは、おいらのこってぃ!
 紫色のねじり鉢巻き、頭上に掲げる蛇の目傘がカッコいい! やんや、やんや!

       

  ここからは助六の独壇場。髭の意休や、その子分のくわんぺら門兵衛に悪態をついて
 やり込めにかかります。遊郭の花魁や若衆も、みんな助六のファンなのです。おっと、
 このカッコ悪い敵役の子分を、歌舞伎界の大御所、片岡仁左衛門さんが演じています。
 こんな端役をこんな大幹部俳優が演じるなんて贅沢過ぎる。しかし、こんなカッコ悪い
 チンピラ役でも、仁左衛門さんが演じると凄味があってちょっとカッコイイ。まぁ役柄
 はカッコ悪いことこの上ないのですが、助六とのやり取りでは相手を食ってしまいます。
 團十郎さん、仁左衛門さんの教えをぜひ学び取ってくださいよ!   

  そうそう、このくわんぺら門兵衛は、團十郎さんだけでなく新之助さんとも絡みます。
 「福山の担ぎ(江戸時代の飛脚:現在も福山通運として名が残っています)」役を演じ
 る、9歳の新之助さん。門兵衛にぶつかってしまい詫びを入れますが、心の狭い門兵衛
 は了見しません(許しません)。見かねた助六が、いい加減にしろ、とばかりに荷物の
 うどんを門兵衛の頭から浴びせかけます。
  それを見た担ぎ(新之助さん)、「ざまぁ見やがれ!」と捨て台詞。客席はまたして
 も大喜びです。新之助さん、本当によくやっていますね。しかしこんなカワユイ宅配便
 のお兄さんがいたら、女性陣はメロメロになってしまうのでは?😆

     

  まだまだ楽しいシーンは続きます。こうやって喧嘩を吹っ掛けて、相手に刀を抜かせ
 ようとしている助六を見かねて、兄の白酒売り新兵衛が助六を諫めに現れます。ここで
 物語は一気に展開。この兄弟は、実は仇討ちで有名な曽我兄弟だったというオチです。 
 現代の芝居だったら観客全員がズッコケる「ベタ」な演出ですが、江戸時代にはこうい
 うノリが受けたようです。歌舞伎の演目、ちょっと油断をしているとなんでもかんでも
 曽我兄弟モノやん。
  そうです、花川戸助六とは曽我五郎(荒事の主役)、白酒売新兵衛とは曽我十郎(なよ
 なよした役柄)なのです、この二人の対照的な振る舞いが、再び客席の笑いを誘います。
 そして、実は助六が喧嘩を吹っ掛けている理由は、親の仇が持っているはずの名刀「友切
 丸」を探しているためだったいうことでした。それを聞いた兄十郎、助六(五郎)に詫び
 を入れ、なんと「なよなよ兄さん」まで喧嘩ふっかけに参加するのです。やめときゃいい
 のに・・・(by妻)
  ここで有名な「股くぐり」の場面です。助六が通行人に突っかかって「股をくぐれ!」
 というと、気圧された田舎侍や調子のよい町人たちが、刀を外して助六の股を潜ります。
 武士にとっては屈辱のシーンですが、なんと助六の後ろに仁王立ちした新兵衛(十郎)も
 同じように「股をくぐれ!」となよなよ声で叫びます。中村梅玉さん、いい味を出して
 いますね。
  そうそう毎回お約束なのですが、この股くぐりの二人目、ちょっとおしゃべりな町人
 が登場します。今回は中村鴈治郎さん。

  このしゃべりが笑わせてくれます。「あら?お兄さん、誰かに似てるわねぇ・・・」
 なんて言いながら、舞台裏の楽屋オチを披露して客席は大爆笑です。まぁご祝儀芝居だ
 からなんでもありかな・・・


  こんな調子で喧嘩を続ける兄弟(アホ)、次は三浦屋の店から揚巻さんと一緒に出て
 くる侍にインネンをつけようとします。助六は、ジェラシーも入っているのでもう本気
 モードです。しかし・・・その侍さんが笠を取ると、なんと・・・
  二人のお母さまだったというオチ・・・かなり無理があるんですけどぉ。。。さっき
 までの勢いはどこへやら、しゅんとした助六。お母さまは「どんな理由があっても暴力
 はいけません。これを着ておきなさい。」と渡されたのは・・・
  無理に動いたら破れてしまうという「紙衣(かみこ)」です。お母さま、これで助六
 が暴れないように枷をはめようとしたのですね・・・さぁもう帰りましょうというお母
 様に従う兄十郎をしりめに、助六は「おれはちょっと気になることがあるので残る」と
 言って二人を見送ります。花道を引き揚げるお母さまと兄十郎。


  ラストは再び髭の意休との対決です。紙衣のためにいつのもの動きができず、髭の意休
 にやり込められる助六。そのピンチを救うのが、揚巻さん! カッコいい!

  あ、揚巻さんは音羽屋の御曹司の菊之助さん。次代の菊五郎さんですから今後も長く
 團十郎さんと共演していく方ですね。意休は尾上松緑(おのえしょうろく)さん。彼も、
 お父様が早くに亡くなり、若いうちから苦労をしてきた役者ですね。もう、こんな役を
 演じる歳になったのか・・・
  そして最後までベタなのは、やはりこの髭の意休が抜いた刀が、親の仇が奪った名刀

 友切丸だったのです・・・そゆことなのね・・・

  よく考えるとこの芝居もかなり無理なストーリーで、あんまり内容がないのですが、
 楽しい場面や舞台映えする演出が面白く、江戸時代からの人気の理由はそこにあるの
 かなと思いました。


  最後に、先代の演じた助六です。オッサン、平成4年五月の歌舞伎座の団菊祭で鑑賞
 しておりました。(結婚する前やな。一人で行っとんたんかい! by妻)

    

  襲名披露公演、十二代目から十三代目へ、確かにバトンは引き継がれました・・・


  来年は、この襲名披露公演は全国各地の芝居小屋で開催されるのではないかなと思い
 ます。関西(京都南座)、名古屋(御園座)、福岡(博多座)あたりが有力です。


  それではこれで、長々と続いた十三代目團十郎&八代目新之助の襲名披露公演のレポ
 ートを終了いたします。お付き合いいただきました皆様、有難うございました。
 (ホンマに長かったわ。これからはちゃんと整理してから書いてもらわんとな。by妻)