Bonne(ボンヌ)のブログ

死別者ですが余生は少しでも楽しく

2024年GW:スペイン・フランスの旅 ㉔ プラド美術館を45分で鑑賞するなんて無理やん・・・その4

  はい、もうどうだっていい記事なんですけどね・・・
  屈辱にまみれた一週間をなんとか乗り切り、気持ちを切り替えて醒めた気持ちで自分
 の楽しいことを書いていこうと思います。(なんだか思わせぶりやな。by妻)


  タイムトライアルのような美術鑑賞の時間も、もはや残り10分+α。地上階に降りて
 みると、そこもスペイン絵画のコーナーでした。ここを訪れて最初に見たのは正面から
 見て左側半分(ルネッサンス時代前期イタリア絵画やドイツ絵画など)でしたが、今度
 は右側半分です。しかし、もうじっくり見ている時間はありません。たまたま目にした
 ものをちらっと観ながら、出口に向かうだけです。しかし・・・

       

  こんな絵を目にしてしまったオッサン、立ち止まってしまったのは言うまでもありま
 せん。地上階には、ゴヤさんのいわゆる「黒い絵」コーナーがあったのですよ。思わず
 目を背けずにはいられないような陰惨でどす黒い絵が集まっているのです。その中でも
 極めつけがコレ。「わが子を喰らうサトゥルヌス」です。ギリシア神話に題材をとって
 いるのですが、いわゆるサタン(悪魔)の姿です。いずれ自分を脅かすかもしれないと
 いう猜疑心により、なんと自分の子供を頭からバリバリと貪り食っているのです・・・


  晩年のゴヤがなぜこんな絵を描く気になったのか・・・おそらく宮廷画家として、心
 ならずも人間的にサイテーな(失礼)ブルボン王家に仕えたのち、ナポレオンに故国を 
 蹂躙されて人民が酷い目に遭うのを目の当たりにし、しかしその後は欧州列強のご都合
 により再びサイテーなブルボン家(ピンチの時に民衆を見捨てて逃げたやつら)が復活
 したのを見て、世の無常を感じていたのでしょう。「ヨノナカバカナノヨ(回文)」と
 いうような心境にあったことは間違いないと思います。
  そう、ゴヤさんは愛国者であり、自分にとってはパトロンでもない一般民衆にシンパ
 シーを感じていました。つまり、スペイン人としての誇りがあり、フランスのブルボン
 王家のふにゃっとした、ひいき目に見ても尊敬するところが全くない人たちに幻滅して
 いたのだろうと思います。(なんだかいやに力がこもっているな、オッサン。by妻)
  しかしゴヤさんは、後世の美術愛好家を喜ばせることはできても、当時の酷い世の中
 を変えるほどの影響力はありません。その鬱屈した思いが、この1820年代の「黒い絵」
 に凝縮されていた・・・というのは考えすぎでしょうか?(そら考えすぎや。by妻)


  もうひとつ目を惹いたのはコレ ↓  「棍棒で殴り合う男たち」です。なんだろ、これ。
 人間社会のありとあらゆる浅ましさを、見ただけでわかる原始的な形であらわしている
 のかなというのがオッサンの解釈です。引いた目で見ると、野蛮で無益な争いに見える
 のですが、戦争・ビジネス・社会生活における人間社会の争いごとのすべてが、所詮は
 こんなレベルなんだよ、と言いたかったのではないかと思います。(オッサンの戦いも
 こういうレベルだよな。しかも勝てないし・・・by妻)

 


  ・・・とまぁこんなことを思いながら5分が経過したわけです。(アホ)しかしもう
 出口に向かわないといけません。ちょっと迷って案内係のおねえさんに尋ねたりしまし
 たが、入場したヘロニモス門の近くにあった、コエーリョさんのスペイン王室(ハプス
 ブルク家時代)の方々の肖像画のあるところまで戻ってきました。
  さぁ、もう帰らないと・・・と思った瞬間。その隣の部屋に人だかりがしているのに
 気がつきました・・・(オイ、はよ帰らんといかんのちゃうんかい?by妻)


  あ、そうだ。プラド美術館のもう一つの目玉がここにあったんだよね。オッサンは、
 残り時間5分なのに、出口ではなくその部屋に足を向けました。これを見なければ一生
 悔いが残る作品があるはずだからです・・・

  はい、16世紀初頭のネーデルラントに、こんなとんでもない画家がいました。その
 名もヒエロニモス・ボシュ、その最高傑作である「快楽の園」です。どうですか、これ。
 三連祭壇画のスタイルですが、左は天国、真ん中は現世、右は地獄をあらわしているの
 ですが、その表現力というか想像力は現代人から見ても度肝を抜かれます。こんな絵を 
 描いてしまっても大丈夫なのか?と心配してしまうほど、当時としてはぶっ飛んでいま
 す・・・やはり注目すべきは真ん中の「現世」です。いや、現代人から見てもちょっと
 やり過ぎじゃないのというくらいのエロティックで官能的な描写です。いかにキリスト
 教的な教義に合わせていると言っても、これを見た田舎の無垢な信者はチビるでしょ。
 人間よりも鳥や小動物を大きく描いているところも意味があるんだろうと思います。

      

  そして右側の地獄絵ですが・・・なんだか音責めのシーンがあったりして、ボッシュ
 さんは音楽が嫌いだったのか?と思ってしまいます。あ~、きっと「聞くに堪えない」
 酷い出来の音楽家が近くにいたのかもしれませんね・・・「あいつの演奏はこの世の
 地獄や・・・」みたいな。(それ、オッサンのピアノ演奏のことちゃう?by妻)
   
  ボッシュさんの絵は、他にもあったのですが残念ながら時間がないのでパス・・・
 後で図録を観たら、見逃がすなんて勿体ないことをしたなぁと後悔しているオッサン。
 やっぱりもう一回訪れて、じっくり見直したいと思います。(できるかな?by妻)


  そのかわり、隣の部屋にあったこの絵 ↓ を観ましたよ。

  これも有名なフランドルの画家、ピーテル・ブリューゲルの渾身の作品「死の勝利」
 です。16世紀中ごろの作品ですが、当時のヨーロッパにおけるありとあらゆる災厄、
 すなわち黒死病とよばれた疫病ペスト、人民を顧みない為政者たちの圧政と無益な権力
 争いの延長で発生した戦争・・・まぁこんな時代に生まれなくて良かったというのが、
 オッサンの感想です。それほどまでにすさまじい迫力なんですよね・・・ 「死神の前
 には、無駄な抵抗はやめろ・・・」っていう感じです。これも、見ておかねばならない
 作品でした。なんとか最後の最後で滑り込みで鑑賞することができました。


  という感じで、ついにタイムリミット。時刻は午後3時です。ヘロニモス門の出入口
 に戻り、預けた荷物(妻の写真)を取り戻して、オッサンは一目散にホテルに戻ります。
 下手に地下鉄を使うより、一直線に歩いた方が早いのです。ホテルには午後3時10分着。
 フロントのおねぇさんに挨拶をして、何度も通ったホテル近くのソル広場の地下にある
 スペイン国鉄(レンフェ)のソル駅から電車に乗って、マドリード市街北部にある国鉄
 のターミナル駅(東京で言うと上野駅みたいなところ)には午後3時30分着。オッサン
 が乗る予定の特急列車は午後3時50分発なので、余裕で間に合いました~😀
  
  ちょっと駅構内の売店で買い物をしておこうと思っていたのですが、なんだか駅構内
 はものすごい人混みでごった返しています。どうやら長距離路線の列車に乗るためには、
 空港の出発ゲートのような手荷物のX線チェックがあるためのようです。
  やれやれ、美術館もそうだったけど駅もかよ・・・まぁそれだけリスクが存在すると
 いうことなんでしょうね。郷に入りては郷に従えじゃないけど、オッサンは列に並んで
 おとなしく手荷物検査を済ませました。その時にはもう出発の5分前になりました。


  ・・・リアル編でもお伝えしましたが、この後、日本ではありえない出来事が起きて
 しまいます。再びピンチに陥るオッサン・・・続きは次回です。