Bonne(ボンヌ)のブログ

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2025年8月:クロアチア・オーストリアの旅 ⑦ ディオクレティアヌス・ドリーム・・・

Bonne

  今夜は旅行記の続きです。

  オッサンはちょっと古代ローマ・フェチ(そんなんあるんかい!by妻)なのですが、

 クロアチアのスプリットはそんなオッサンを満足させるすばらしい古代ローマ遺跡が

 残っているのです。なにしろ、スプリットの旧市街そのものが、後期古代ローマ帝国の

 優れた皇帝ディオクレティアヌスが隠居後の住まいとした宮殿が、中世から近世を経て

 そっくり街に変貌したという、世界でも例のない場所なのです。

  当時のディオクレティアヌス宮殿を再現した絵がありました。ま、宮殿と言うよりも

 城塞ですね。当時は治安が悪かったから仕方がないと思いますが、この堅牢なレンガ造

 りの頑丈な建物に、後世の人々が住み着いて街になってしまったということです。

 そんな歴史のある場所に、今自分が訪れていると思うとコーフンします。(アホ)  

 縦横は約200メートル四方、壁は厚さ2メートルで高さ20メートルだそうです。 


  ディオクレティアヌス帝は、紀元3世紀後半に現在のスプリットの近くにあった古代

 ローマ帝国時代のダルマチア属州の州都サロナ(現在のソリン)の貧農の子に生まれた

 のですが、ローマ軍団に入隊してから事務方?で頭角を現し、皇帝警護隊長を経て遂に

 皇帝に上り詰めたという人です。そして、皇帝になってからは今まで誰も考えもしなか

 った「改革」を始めたのです。それは、ローマ帝国自体を大きく変えることになります。

  詳しいことは塩野七生先生の「ローマ人の物語」をお読み頂くとして(手抜きじゃ)、

 思いっきり端折って書きますと・・・

  「当時帝国に侵入して略奪を繰り返す蛮族を撃退するために、軍の最高司令官である

 皇帝を自分を含めて4人に増やし、軍人の数も、官僚の数も4倍にした」ということで

 す。官僚の数を増やしたのは、軍隊にかかるコストを賄うために課した税金を取り立て

 るためと、皇帝を暗殺の危険から守るとともに皇帝の権威を高めるためとのことです。

  この結果、一時的に蛮族の攻勢は収まりローマ帝国に平穏が戻ったということですが、

 しばらくすると過酷な税金と官僚主義の下でローマ帝国の経済と民衆の暮らしは厳しく

 なってしまいます。ですが、その状況でディオクレティアヌスは国家運営を軌道に乗せ

 るため皇帝の権威を高める=絶対君主として民衆の上に君臨する、というやり方を取り

 ました。支配者と被支配者、が完全に分断される時代になってしまったのです。

  実は皇帝が絶対的な存在となったのは、このディオクレティアヌスの改革からなので

 す。「王冠を被って緋色のマントをまとい、いつもは宮殿の奥深くで執務していて一握

 りの腹心以外には会わない神聖な存在」という絶対君主のイメージは、ディオクレティ

 アヌス以後の皇帝の姿なのです。それまでの古代ローマでは、為政者や皇帝は民衆が求

 めれば自ら会わなければいけないし、国家の危機には軍隊を率いて自ら戦場に出なけれ

 ばなりませんでした。ディオクレティアヌス帝は、帝国の危機を乗り切ることには成功

 しましたが、結果としては現在でも某国で見られるような「腐敗した絶対君主制の国」

 にローマ帝国を変えてしまったのでした・・・

  (オイ、どうでもえぇけど長いぞ。by妻)


  ただし「腐敗した絶対君主制の国」になったのはディオクレティアヌスが引退した後

 のことであり、彼自身は帝国の平和と繁栄のために一所懸命知恵を絞って、皇帝である

 彼にしか権利のない「法律の制定」つまり社会改革の試みに明け暮れました。

  しかし、皮肉にもその政策は「物価高への対策のためにすべての財・サービスの価格

 統制をおこなう」というように、現代人の目から見たら「社会主義者か?」と思うよう

 な、失敗作ばかりであったようです。そして「帝国の治安を乱すキリスト教を弾圧する」

 という政策を推し進めたため、後世のキリスト教会に恨まれることにもなります。その

 結果、後世からは「嫌われ者の皇帝」となってしまったんですね。


  ただし実は彼は生前に自分の意志で退位した、唯一のローマ皇帝なのです。つまり、

 「私腹を肥やして一族郎党に甘い汁を吸わせて権力者の地位に居座るタイプ」ではない、

 珍しい支配者だったのです。うーむ、そんな人だったのにいろいろと残念ですな。

      

  スプリットの旧市街の中心広場(ペリスティル)の近くには、ディオクレティアヌス

 帝の銅像がありました。最近造られたものらしく、ローマ帝国軍最高司令官の正装です。

 実際に彼が戦場で指揮を執ることはなかったと思いますが、彼自身は生涯、帝国の平和

 と発展のために戦っていたのだと思われます。

  そういえば、妻は出かける時に支度で遅くなると「ちょっと出遅れティアヌス」って

 ギャグを飛ばしていたよな・・・😅

 

  さて、散々前置きが長くなりすみません。このスプリットの街は、ディオクレティア

 ヌス帝が引退後に作らせた堅牢な「要塞宮殿」が原型なんですよ。起源は紀元3世紀。

  そんなこの街の観光には、まず皇帝ディオクレティアヌスの功績と彼の生きた時代に

 想いを馳せることができるというスポットです。その名も「ディオクレティアヌス・ド

 リーム」。これも最近できた施設らしいのですが・・・旧市街中心部の宮殿の北門から

 外に出て、5分程歩いたところにあるちょっと静かな住宅街にありました。

  はい、今流行りの?ヴァーチャル・リアリティで、古代ローマ帝国後期・ディオクレ

 ティアヌスの時代を再現した映像を見せてくれるということです。「地球の歩き方」に

 も掲載されていて、事前予約ができるということで日本から予約していたのでした。

 トロギールからのバスが遅れてハラハラしましたが、午後7時半の最終コースに申し込

 みをしていたのでなんとか間に合いました。あれ?しかし誰もいないぞ・・・

  中に入るとそれらしい雰囲気。受付のお姉さんが一人しかいませんが、ここで間違い

 はないようです。最終回だから空いているのかな・・・と思ったら、その前の回はお客

 さんがゼロだったみたいです。誰もVRのスタジオから戻ってこなかったから・・・

  にわかに不安な気持ちになるオッサン。ひょっとして、これはハズレなのでは?

  うーむ、やっぱり出遅れティアヌス、ちゃうディオクレティアヌス帝は人気がないの

 ね・・・まぁカエサルとかハドリアヌスとか、マルクス・アウレリウスとか、ネロとか

 だったらもっと人気が出たのは間違いないでしょう。でもスプリットの「顔」は彼です

 からね。やっぱり最終回はオッサン一人。時間が来たら、お姉さんに奥のスタジオまで

 案内され、椅子に座ってVRのヘッドホン付きの視聴覚装置を装着してもらいました。

 

  はい、10分程度の映像でしたが、まぁ迫力はありましたかね・・・特撮映画みたいな

 感じでしたが、古代ローマ時代を再現したと思われるスタジオセットで、奴隷の恰好を

 した俳優が案内役をしてくれるというものでした。宮殿の玉座に座る皇帝の前にかしづ

 く宮廷官僚、階段の下の大広場で平伏する民衆たち・・・なんかざ~とらしいな・・・

  まぁね、映像はなかなか面白かったけれどもあまり学術的なものではなかったです。

 係のお姉さんもなんだか「こんなショボいものでスミマセン」みたいな感じで、バツの

 悪そうな顔をして見送ってくれました。でも、古代ローマ帝国に関心のない一般観光客

 の方々にとっては、このスプリットがこんな時代に誕生したということを知ってもらう

 のには役立つのではないかなと思います。(また「上から」になってるで。by妻)


  どうせなら大勢の人で賑わう中心広場ペリスティルの近くにあればよかったのにね。

 「楽しいアトラクション」として少しは見る人もいたかもしれないですから・・・


   そうそう、旧市街の北門の近くには面白いモニュメントがありました。

     

  グルグール・ニンスキーさんという、10世紀のクロアチアの司教だそうです。

  カトリックの司教であったものの、ラテン語の強制に反対し、クロアチア語(スラヴ

 系言語)でミサを行ったということでクロアチアでは愛国者として親しまれているそう

 です。しかし今では、この像は観光客に人気のスポットなのです。この像の左足の親指

 に触ると幸せになれる、というよく聞く「言い伝え」のおかげらしいですが。

  (そういうオッサンも触っとったやん。by妻)

  しかしグルグールさんとは楽しい名前ですね。絶対、妻が聞いたら大喜びするよな。

 

  さて、この後は再びディオクレティアヌス宮殿跡、つまり旧市街に戻ります。北門

 (金の門)から入るところのビデオ映像がありましたので、掲載しておきます。

 ・・・コレ、前回の記事にも乗せたかな・・・(アホ)

  お、ちょうど美女4人が記念写真を撮ってもらっているところに遭遇しました。むさ

 苦しいオッサンが立ちはだかっているとイラっとしますが、これならOKです。😆

 (そんな調子こいているとまた痛い目に逢うで・・・by妻)

 

 2025年8月3日 スプリットのディオクレティアヌス宮殿(旧市街)に入ります!


   はい、この後でちょっと酷い目にあってしまいました・・・😢 

   ま、痛くはなかったですが・・・ 続きます。