Bonne(ボンヌ)のブログ

死別者ですが余生は少しでも楽しく

2015年GW フランス・ドイツの旅 ㉙コルマール:イーゼンハイム祭壇画

  ついに6月になってしまいましたが、フランス・ドイツの旅記事を続けます。
  4日目の朝、コルマールのホテルのチェックアウト時間は11時なので、それまでの
 間に、もう一度旧市街の観光に出かけました。前日は夜11時には就寝し、朝6時起きで
 したのですっかり体調も戻りました。これでまたあっちこっち駆けずり回っても大丈夫
 です。(イヤ、そういうことではないと思うけどな・・・by妻)
  朝食の写真を撮り忘れましたが、ここはコンチネンタル形式ではなくビュフェ形式で
 チーズやハム、タマゴ料理やサラダなどもあって充実していました。朝からしっかりと
 食べて、体力維持に努めます。


  この日もあいにくの天気でしたが、プティット・ヴニーズ(リトル・ヴェニス)の
 運河沿いはしっとりとした雰囲気で情緒がありました。朝早い時間は、まだ観光客が
 動き出す前なので静かです。中央に見える傾斜のキツイ屋根の建物が、私の泊まった
 オステルリー・ル・マレシャルです。私の宿泊した部屋は、その傾斜のキツイ屋根の
 部分にある屋根裏部屋でした。(しつこい、まだ根に持っとるんか!by妻)
  このホテルのある運河沿いの部分は、16世紀頃までは城壁だったそうです。フランス 
 の絶対王政が始まる頃に(相対的には安全になったので)、城壁が取り壊されて現在に
 残る建物が建てられたとの事です。凄いね、修復はあったにしても築500年近くですよ。
 


  オステルリー・ル・マレシャルの正面はこんな ↓ 感じです。いかにも女性に人気があ
 りそうな外観ですね。オッサンが一人で宿泊するには場違いだったかも・・・



  さて、まだ朝8時半。前日見そびれたウンターリンデン美術館所蔵の名画を見学して
 からコルマールを後にしたいと思います。
  旧市街の通りを歩いて行くと、まだ開店前ですがショップのウィンドウディスプレイ
 が目につきます。オッサンはどうしてもお菓子屋さんやワインショップに目が行くな。  
 このお菓子屋さんでは、アルザス名物?のコウノトリに因んだもの、アスパラガスを模
 したお菓子など、楽しいディスプレイが目を惹きました。    


  そして開店前ですがアルザス独特の形態のワイン・バー、ヴァイン・シュタブがあり
 ました。お昼時や夜は大勢の地元の方や観光客で大賑わいでしょうね。ブラッスリー、
 カヴォーという表記もありますので、カジュアルな食事も楽しめ、本格的なワインの
 試飲もできるという・・・オッサン、もう一泊して立ち寄りたくなりましたが、そうは

 いきません。この後も予定がぎっちり詰まっていますので、ここはまたの機会に。

  そうそう、本当はもう1泊できたらアルザスのワイン産地の村(有名なリクヴィル等)
 にも行ってみたかったです。いろいろ調べたのですが、コルマールからバスで4~50分
 で行けるのですが本数が少なく、往復+滞在で丸々半日はかかりそうでしたので断念し
 ました。試飲のできる生産者や直売ショップもあり、ちょっとした観光スポットもある
 ので気になっていましたが、ここもまたの機会です。(そんな機会があるんかい?by妻)


  さて、時間が限られるので先を急ぎます。お目当てのドミニカン教会に着きました。
  ここは13世紀にドミニク派の修道院として建設された、武骨でゴッツイ感じ?の教会
 です。聖マルタン教会同様、この小さな町には不釣り合いなほどデカい教会です。

     


  まずはこの教会の主祭壇に飾られた、ショーンガウアー作の「バラの茂みの聖母」の
 祭壇画を鑑賞します。

  マルティン・ショーンガウアーさんは15世紀前半にコルマールに生まれた(当時では)
 ドイツの画家です。かなり大きな祭壇画で、背景にバラの生垣が描かれるなど、独特の
 雰囲気(宗教画なのになんとなく世俗画っぽい感じ)がします。彼の作品は他には殆ど
 残っていないらしく、この祭壇画は極めて貴重な作品だそうです。むしろこれが残って
 いなかったらショーンガウアーという画家が存在したことも記録に残らなかったのかも
 しれません。この頃にはバラの品種改良などはされていませんので(当たり前やんけ)、
 原種のオールド・ローズっぽい花ですね。シャクヤクみたいな感じに見えますが・・・
 

       

 
  さぁそして、ウンターリンデン美術館の至宝、マティアス・グリューネヴァルトさん
 の最高傑作「イーゼンハイムの祭壇画」を見学します。美術館が修復中のため、特別に
 ドミニカン教会内に展示され、拝観することができました。良かった。
  グリューネヴァルトは16世紀のドイツ・ルネサンスの画家で、その時代を代表する
 デューラーに比べると知名度は低く、確かに斬新さではやや及ばない感じがしますが、
 この祭壇画に見られるように残酷なまでの写実性と構図の確かさで、中世絵画とは一線
 を画す作品を数多く生み出した、時代を先取りした天才画家だったと思います。 
 まぁ御託はいいので、見てみましょう。 

  中央にキリストの磔刑のリアルなシーンがドーンと描かれていますが、思わず目を
 背けたくなるような痛々しさが伝わってきます。ちょっとピンボケでスミマセン。
 せっかくなのでちゃんとした画像をウィキペディアから借用させて頂きました。

  中世の祭壇画では、たとえ磔刑のシーンでも、キリストは人間を超越した存在ですの
 で荘厳で威厳に満ちた表情でしたが、この絵では実にむごたらしく死に追いやられた姿
 で描かれています。この人が奇跡を起こすなんて考えられないくらいです。そして白衣
 の聖母マリアや、足元にひざまずくマグダラのマリアも、悲しみと絶望に打ちひしがれ
 ているようです。ここまでリアリティを追求した絵画は、当時としては珍しかったはず。
 ちなみに倒れそうなマリアを抱えるのが使徒ヨハネ、キリストを指さす男が洗礼者(預
 言者)ヨハネです。足元にいる羊がそれを象徴していますね。「この男が救世主だ」と
 言っているわけですね・・・知っとりますよ、今ではみんな。(アホ)
  祭壇を支える下部(プレデッラ)には、キリストの埋葬シーンが描かれています。


  ウィキペディアによりますと、この祭壇画は元はコルマールの郊外のイーゼンハイム
 の街の聖アントニウス会修道院付属の施療院礼拝堂にあったものであり、修道会の守護
 聖人である聖アントニウスの木像を安置する彩色木彫祭壇だそうです。
 (制作は1511年 ‐ 1515年頃。)
  そうです、実は木像を安置する祭壇なのです。え?どこに? この扉の中です!
 実はこの絵はの真ん中から左右に観音開きできるようになっており、三重構造になって
 いるのです。うわぁ、手が込んでいますね。この第一面の「キリストの磔刑」の生々し
 い絵画だけでも度肝を抜かれましたが、この内部にもまだ見るべきものがあるのです。


  次は第二面の祭壇画です。元々は第一面を左右に開くと、この第二面が現れるのです
 が、ここでは鑑賞しやすいように、第二面・第三面を取り外して全てを鑑賞できるよう
 にしていました。オリジナルの展示方法ではないけど、この方が便利ですからね。 

  こちらの第二面では、中央のパネル ↑ には「キリストの生誕」の場面が描かれていま
 す。そして左右のパネルには、「キリストの復活」と「受胎告知」です。(中央パネル
 と左右パネルを別々にして展示していました。) 
  こちらもピンボケで見づらくてスミマセン。鮮やかな色合いと、ダイナミックな構図
 ですね。もはや中世ではありません。


  そして最も奥にある第三面には、中央に聖アントニウス、左に聖アウグスティヌス、
 右に聖ヒエロニムスの立像が祀られています。(これはグリューネヴァルトの作品では
 ありません。祭壇画の中に収められた「ご本尊」です。)

  スミマセン、これも私の撮影したデジカメ写真ではピンボケでよくわからないので、
 図録の写真を載せておきます。左側扉が「聖ヒエロニムスの隠遁生活」、右側扉が有名
 な「聖アントニウスの誘惑」のシーンを描いた絵画です。

  さらに下のプレデッラには、キリストと12使徒の彫刻が治められています。本当に
 手が込んでいますね。よく造りましたよ・・・

  いやぁ、噂に聞いていたイーゼンハイムの三重の祭壇画は、本当に素晴らしかった。  
 コルマールまで足を伸ばして観に行く価値はあります。 


  しかしあんまりのんびりはしていられない私、10:30にはホテルに戻ってチェック・
 アウトをしなければなりません。名残惜しいですが、雨の上がった旧市街を再びホテル 
 まで戻ります。途中、また面白いもの ↓ を見つけてしまったので、おまけに。
       しかしいつの時代にも(どこにも)、面白いことを考える人がいるのですね。


  あまりに短い滞在でしたが、これでコルマールともお別れです。
  この後は、電車で約40分。アルザスの中心都市ストラスブール(ストラスブルク)に
 向かいます。続きます・・・(ハイハイ。by妻)\