Bonne(ボンヌ)のブログ

死別者ですが余生は少しでも楽しく

ウィーン・フィルハーモニー ウィーク イン ジャパン 2021!

  今日は文化の日。それにふさわしい一日を過ごしました。

      

  オッサン、なんとサントリーホールに、ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団の来日
 公演を聴きに行ってきました。(また散財しとるな。by妻)
  コロナのせいで、軒並み海外からの著名演奏家・オーケストラの来日が中止となる中
 で、ウィーン・フィルハーモニーは毎年11月に来日公演「ウィーン・フィルハーモニー
 ウィーク イン ジャパン」と銘打って演奏会を開催してきました。(なんと昨年も実施
 されています。)


  指揮者は現在の世界の音楽界の頂点を極める巨匠のひとり、リッカルド・ムーティ様
 です。彼は今年の元旦のウィーン・フィル・ニューイヤーコンサートでも指揮をしまし
 たし、ウィーンフィルとはきわめて関係が良好なようです。そうそう、そのニューイヤ
 ーコンサートは前代未聞の無観客で行われました。ムーティ様は、「コロナのせいで、
 音楽に親しむ機会が失われてはならない。音楽は精神を健康に保つために必要なのだ」
 と力説していました。世界中の人たちが待ち望んでいるウィーン・フィルの演奏会です
 から、可能な限り演奏会を実施すべきだというのがムーティ様の考えです。素晴らしい。
 今回も楽団員全員がワクチンを接種したうえで、来日公演が開かれることになりました。
’(ワクチン効果の是非については、議論の余地がありますけどね・・・)


  ウィーン・フィル演奏会のチケットは高価なうえに非常に入手困難なのですが、今回
 はあっさり安い席(でも3万円・・・)が確保できたので行ってまいりました。

  開場前のサントリーホールのカラヤン広場前です。既に多くの人が集まっていました。
  オッサンがウィーン・フィルのコンサートを聴くのは生涯で二回目、前回は高校生の
 時(1983年)に、学校をさぼって上野の東京文化会館まで日帰りで聴きに行きました。
 (もう時効ですからね。でもこの時の担任は、知っていながら黙認してくれました。
 萩田先生。この時は見逃してくれてありがとう。でも先生も行きたかったんちゃう?)
 その時は今は亡きロリン・マゼルの指揮、演目はベートーヴェンの交響曲第六番「田園」
 と第三番「英雄」というとんでもないプログラムでした。18歳の、まだ髪の毛が豊富な
 少年だったうぶなオッサン?にとっては、衝撃的な体験でした。38年ぶりなのかぁ・・・


  そうだ、もう一つ思い出した。妻が亡くなる2013年、ウィーンフィルが鳴り物入りで
 ベートーヴェンの交響曲全曲を5夜に分けて演奏する機会があり、闘病中の妻が「ぜひ
 聴きに行きたい」と言いました。たぶん妻ももう最後のチャンスと思っていたはずです。
 しかしオッサンがもたもたしているうちにチケットは発売開始後30分足らずで完売して
 しまい、入手できませんでした。その時の妻の残念そうな顔が思い出され、泣きそうに
 なったオッサン・・・でも、結局妻はそのコンサートの日を迎える前に亡くなりました。
 すまん、妻よ。今日はベートーヴェンではないけど、一緒に聴きに行くからな。


  ・・・ということで、妻の位牌を鞄に入れてサントリーホールまでやって参りました。
 世界一のオーケストラのコンサートということで今回も当然チケットは完売、満席です。
 オッサンは開演30分前に到着し、早めに着席しました。安い席なので、オーケストラの
 舞台まではかなり遠いです。指揮者や奏者の表情を見るため、双眼鏡を持ってきました。        
 でも音響の良いサントリーホールですので、音については問題ないかなと思います。


  あ、また思い出した。(なんや、今度は? by妻)
 前回サントリーホールに来たのは2019年11月のベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
 のコンサートでした。指揮者は90歳近いズビン・メータさん、演目はブルックナーの
 交響曲第8番という大曲。しかし席はオケの背後の席でした。あそこだとやっぱり音が
 届きにくいんですよね。(管楽器は前を向いて吹くからね。後ろには届きにくい。)
 まぁベルリンフィルの金管楽器のド迫力では、さほど問題はなかったかもしれません。
 指揮者の顔を真正面から見られて、指揮の勉強をするにはいいかもしれませんが・・・


  そういえば今回は豪華なプログラム(だいたい2,500円)を販売しておらず、簡易的
 な冊子のプログラムを無料で配布していました。なぜだろう。広告のスポンサーがつか
 なかったからかもしれない。まぁこれでも十分です。

   


  さて、いよいよ16時になり開演です。オーケストラの楽団員がぞろぞろとステージに
 集まり、コンサートマスター(第一ヴァイオリンのトップ奏者)の指示で音合わせです。
 演奏が始まる前のこの瞬間に、オッサンはドキドキ、わくわくします。(アホ)
  さぁそして、満を持してわれらがマエストロ、リッカルド・ムーティ様の登場です。
 ムーティ様も今年で御年80歳。もう50年近く世界のトップで活躍している方です。

  この日の演目は、まずシューベルトのハ短調の交響曲(第四番「悲劇的」)で始まり
 ます。シューベルトは生前は恵まれない作曲家で、貧困のうちに31歳の若さで亡くなり
 ますが、生粋のウィーン子であり、今ではオーストリアを代表する作曲家です。素朴で
 美しいメロディーが特長で、このハ短調交響曲も第二楽章のテーマが美しすぎて涙腺が
 崩壊するほどです。(オッサン、涙もろいからな・・・)
  
  ちょっと古いですけど、1971年のカール・ベーム指揮の演奏を共有いたします。
 演奏時間8分30秒くらいから第二楽章が始まりますが、これは天上の音楽です。
 ・・・しかし第四楽章が遅すぎて、突んのめりそう。(苦笑) 
  
シューベルト:交響曲 第4番 ハ短調 D417《悲劇的》ベーム 1971


  続いては、ストラヴィンスキーのディヴェルティメント:バレエ音楽「妖精の接吻」
 による交響組曲です。なんや、知らん曲やな(by妻)。オッサンも初めて聞きますが、
 チャイコフスキーの没後35周年の1928年に、委嘱されて作った曲だそうです。そうか
 ストラヴィンスキーはバレエ音楽もよく作曲しましたので、先輩のチャイコフスキーを  尊敬していたようです。確かにチャイコのバレエ音楽のようなフレーズと展開が見られ
 ますが、途中ではやはりストラヴィンスキーらしい、独特のリズムになります。まるで
 ペトルーシュカか、火の鳥の一節のように感じるところもありました。まぁ、ちょっと
 余興で作ってみました、みたいな曲ですが、演奏効果はあって面白かったです。


  休憩時間は20分。コロナ感染予防対策のため、バーは一階の一か所しか営業していま
 せん。オッサンはトイレにも行かずに階段を早足で駆け下り、バーに並びます。しかし
 既に長蛇の列。係りの人が関所を作っていて通せんぼです。どうやら、一定の人数しか   入れてくれないようです。20分しか休憩時間がないのに!
  5分程待って、ようやく中に入れてくれました。オッサンは1,500円出してシャンパー
 ニュをオーダーしました。なんかそういう気分だったのでね。(贅沢やの~by妻)


  サントリーホールなので、やっぱりサントリーが製造したり輸入したりしている銘柄
 が出されていますね。シャンパーニュはローラン・ペリエ。ウィスキーは「響」「山崎」
 「白州」のトリオがそろい踏みです。スパークリングはスペインのカバ、フレシネか。 


  ぐいっと一杯ひっかけて(ここは大阪の立ち飲み屋やないで。by妻)、席に戻ります。
 後半はメインのプログラム。メンデルスゾーンのイ長調の交響曲第四番「イタリア」で
 す。さすがイタリア・ナポリ出身のムーティ様の選挙区、ちゃう選曲ですね。 
  アルプスの北に住むドイツ人にとって、陽光きらめく南国イタリアはまさに憧れの地。
 かのギョエテ(ゲーテのことね)さんも「君よ知るや、南の国・・・」と書き出して、
 南国イタリアに旅した思い出を滔々と語っていますよね。ドイツの新興銀行家の御曹司
 だったメンデルスゾーンさんも、イタリアを一年近く旅し、その記憶をこの曲に込めて
 造ったといわれています。冒頭から踊りだしたくなるようなわくわくしたフレーズで、
 思わず南国の気分に引き込まれてしまいます。でも、楽しく陽気な雰囲気のなかでも、 
 ときどきメランコリーな雰囲気が現れたりして、イタリアの持つ微妙な光と影を音楽に
 乗せて表現しています。やっぱり天才だな、この人も。


  ウィーン・フィルの演奏も、ムーティ様の演奏も見当たらなかったので、これまた
 古い歴史的演奏ですが、サー・ゲオルク・ショルティ様の演奏を共有します。
 オケはシカゴ交響楽団か、ロンドン交響楽団かな?ちょっとテンポが速すぎかも・・・
   
Mendelssohn Symphony No.4 "Italian" Sir Georg Solti メンデルスゾーン 交響曲第4番「イタリア」サー・ゲオルク・ショルティ


  そうそう肝腎の演奏ですけど、素晴らしいのは当たり前として、印象に残ったのは
 ピアニシモ(とても弱く弾くところ)の美しさ。ムーティ様もその辺はよく利用して、
 ここぞという場面では体を折り曲げて小さな音を要求します。ヴァイオリンにしても、
 ホルンにしても、こんな小さな音で(しかも一人ではなく数人で)、ここまで安定して
 粒のそろった音が出せるとは驚異的です。ピアニシモをこれだけ緻密に小さな音で表現
 できると、ディナーミクの幅が大きくなるのは当然。シューベルトやメンデルスゾーン
 という古典的作品なので大音量の金管楽器がない(メンデルスゾーンの交響曲ではトロ
 ンボーンとチューバは不在)ため、弦楽器のアンサンブルと木管楽器とホルンのソロの
 目立つこと!そしてなんといってもウィーン風のホルンの音色の柔らかなこと。あんな
 難しい楽器をこんな風に自在に表現できるなんてスゴイです。そうそう、金管楽器軍団
 の配列はステージ左からトランペット、真ん中がホルン、右がトロンボーンとチューバ
 という並びで、やっぱりウィーン・フィルの金管はホルンが主役なんだなと思いました。


  素晴らしい演奏会でした。しかしブラヴォーも歓声も禁止。拍手とスタンディング・
 オベージョンで応えるしかありません。観衆の皆さんも大満足のようです。
  ※下の写真は、ウィーン・フィルの本拠地、ムジークフェラインザール(学友協会)
   のホールです。ニューイヤー・コンサートの会場としても有名ですね。


  そして鳴りやまない拍手の後、ステージに金管楽器と打楽器奏者がぞろぞろと現れま
 した。アンコール曲の準備のようです。ステージ中央の指揮台に戻ったムーティ様が、
 客席の方に振り向き、何かをしゃべります。
  ・・・ラ・フォルツァ・デル・デスティーノ! 
 それを耳にして、オッサンは「うおぉ」と叫んでしまいました。(アホ)


  アンコール曲はオッサンの崇敬するイタリア・オペラの巨匠ジュゼッペ・ヴェルディ
 先生の、過激ちゃう歌劇「運命の力(La Forza del Destino)」序曲でした。
  ちょっと古くてモノラルの聴きにくい録音ですが、ムーティ様の若かりし頃の映像が
 見つかりましたので共有いたします。たぶん30代のイケイケの頃。カッケー!
   
Fuerza del destino-Ricardo Mutti


  もうオッサンはコーフンして立ち上がり、拍手喝采です。
  ムーティ様、今度はヴェルディ先生のオペラを持ってきてください。「シチリア島の
 夕べの祈り」か「ドン・カルロ」でお願いします。ヒロインが死ぬオペラはオッサンは
 見られないので・・・(そんな勝手なことを言われてもな・・・by妻)


  あ、スミマセン。途中からかなり独走して、一般の方には「なんのこっちゃ?記事」
 になってしまいました。(まぁオッサンが楽しめたんなら、いいんちゃうか。by妻)
 妻(の位牌)と一緒に聴きにいったはずなのに、やっぱり最後には自分ファーストに
 なってしまうオッサン。あかんわ・・・


  ちょっと今回は調子に乗りすぎかなぁ・・・クラシックの記事は久しぶりやからね。
 たまには一流演奏家のコンサートに行きたくなりますよ。