2017年夏、北欧&ドイツの旅 ㊴ハンブルク市立美術館 ~ その2 ~
北ドイツの大都市ハンブルクの市立美術館の記事を続けます。
古典絵画のエリアを見た後、この美術館の誇る19世紀の絵画を見学します。ここには
19世紀後半から世紀末にかけてのフランス印象派やドイツ表現派、英国ラファエル前派
の名画が揃い、とても充実しています。ハンブルクが栄えた時代に重なるのかな?
しかしその前に、19世紀前半のドイツを代表するロマン主義の画家、カスパー・ダー
ヴィト・フリードリッヒさんの絵画を鑑賞します。まずはこの絵 ↓ 「さすらい人」です。
安直にシューベルトの「さすらい人幻想曲」のレコード・ジャケットに使われていた
記憶がありますが(確かマウリツィオ・ポッリーニさんのピアノ演奏)、それだけ有名
な作品なんでしょうね。霧がかかった山頂の崖の上に立つ、こちらに背を向けた青年の
姿は、画家の心意気を示しているようです。画家43歳、1817年の作品だそうです。
もうひとつフリードリッヒの名作といわれる「氷の海」です。荒涼とした北の凍った
海の風景ですが、手前は崩れた岸壁でしょうか?とても寒々としていてこんな場所には
絶対に行きたくない、という感じです。(写真がうまく撮れなかったので図録から)
1824年に完成した絵だそうです。
続いてはフランスの著名な画家たちの作品。エドゥアール・マネさんの「ナナ」です。
パトロンの紳士が右端に部分的に描かれていますが、題材といい、当時はやった写真の
ような構図といい、同時代のエドガー・ドガさんの影響が感じられます。でも「ナナ」
ちゃんがかわいいので有名な絵です。(ホンマけぇ?by妻) 1877年の作品です。
もうひとつフランスの画家、誰もが知っているピエール・オーギュスト・ルノワール
さんの「ブーローニュの森の乗馬(1873年)」です。息子を連れて乗馬に興ずるおば様、
新興ブルジョワ市民の得意げな姿が臆面もなく描かれています。先ほどのマネの作品も
そうですが、絵画作品とは「時代を写す鏡」といえるかもしれませんね。
(何を気取ったことを言っとるんじゃ。by妻)
そして英国のラファエル前派と呼ばれる画家たちの描く、ミステリアスな女性(いわ
ゆるファム・ファタル=運命の女性(ひと)≒魔性の女)の絵もありました。こちらは
その代表作、ダンテ・ゲイブリエル・ロセッティが1863年に描いた「トロイのヘレネ」
です。彼はヴィクトリア女王時代の英国の最盛期に活躍した画家で、古代ギリシャ神話
や歴史的な題材をもとに、このようなミステリアスで特徴的な絵を描きました。
(こちらも撮影に失敗したため図録から)
トロイのヘレネは、あのトロイ戦争の発端となったとされる絶世の美女。スパルタ王
の妃であったのが、トロイの色男・王子パリスに略奪された彼女を取り戻そうと、本土
ギリシャの都市国家たちが小アジア(今のトルコ)西部の大国トロイに攻め込んだのが
始まりだそうです。歴史的な戦争を「女をめぐる争い」にしてしまっていいのかなぁ、
ホーメーロースさん。まぁ、すべてが創作ということではなく、きっかけになった事件
はあったのかもしれません・・・でも、この絵を見るとまんざら作り話でもなさそうな
気がしてきますね。(アホ)
続いてはノルウェーの著名画家エドゥアルト・ムンクさんです。あの「叫び」連作
のおかげで世界的にもメジャーな方ですね。この「マドンナ(1895年)」も有名で、
同じような絵がいくつかあるように記憶しています。(日本で開かれたムンク展にも
出ていた気がします。)まだ若い時の作品ですが、彼独特の?「病んでいる世界」が
感じられますね。なんだか夢に出てきそうな感じのインパクトです。
この後は20世紀以降の絵画とモダン・アートを見学します。ハンブルク市立美術館の
本領が発揮されるのは、ここからですね。(鼻息が荒いぞ、オッサン。by妻)
まずはドイツ表現主義派と呼ばれる画家たちの作品を見学します。「表現主義派」の
特徴は、内面的、感情的、精神的なものなど「目に見えない」ものを主観的に強調する
様式です。そのため一見「写実主義」に対抗するもののように見えますが、実は「目に
見える外側の世界」だけを描いた「印象派」に対抗するもの、として生みだされたのだ
そうです。ふーん。フランスは印象(Impression)でドイツは表現(Expression)なの
ですね。フランスは受け身の女性、ドイツは攻め手のオッサン、て感じかな。
(なんのこっちゃ?by妻)
表現主義派は第一次世界大戦前の20世紀前半のドイツで流行し、首都ベルリンを中心
とする「ブリュッケ(橋)」グループと、南部バイエルンの州都ミュンヒェンを中心に
活躍する「青騎士」グループに分かれて張り合っていたそうです。しかし、第一次世界
大戦の勃発と、その後に台頭したナチスに「退廃芸術」の烙印を押されてしまったこと
で衰退してしまいます。
さて、まずはベルリンの「ブリュッケ」派の代表的画家、エルンスト・ルートヴィヒ・
キルヒナーの登場です。1926年の作品「画家とモデル」です。大胆な配色と構図、そし
て意味ありげなモデルの視線。画家とモデルの関係って、こんな感じなのね・・・って
いう絵ですな。うーん、何を「表現」しようとしているんでしょうか・・・
キルヒナーさんは、こんな ↓ 漫画のような絵も描いています。裸のカップルの周りに
いじわるそうなオッサンたちが居て、二人をのぞき見していますね。なんだか感じ悪い。
人間の卑しさを表現しようとしているのかなぁ・・・
「ブリュッケ」の画家たちの特徴は、革新的情熱だということです。混迷する現代芸術
に彼らなりに警鐘を鳴らして、未来の芸術への架け橋(ブリッジ)となるような芸術を
創造するという理念があったのだそうです。ふーん、そうなんだ。
ではもう一人の「ブリュッケの画家」、エミール・ノルデさんの絵を見てみましょう。
1912年の作品「エジプトの聖マリア」三部作の一つ「アレクサンドリアの港にて」です。
なんでしょうね、ストリップ小屋でしょうか?スケベな船乗りのオッサン?たちが
大喜びしていますね。(オッサンの好きそうな絵やんか。by妻)うーん、現世の欲望
をデフォルメしてさらけ出すようにして描いているのかな?
では、南ドイツの「青騎士」グループの作品を見てみましょう。
まずはリーダー格のフランツ・マルクさんの「モンキー・フリーズ(1911年)」です。
なんだか楽しい絵ですね。こっちの方が素朴で親しみやすい感じがします。
「青騎士」グループは「子供の絵」や「プリミティブ(原始的)な絵」に関心を示し、
動物や自然を独特の表現力で描いた絵画を多く残しました。グループの名前はマルク
さんの描いた「青い馬」から着想を得たのだとか。ロシアからやってきたあのワシリー・
カンディンスキーさんも初期の頃は参加していました。
こちら ↓ は彼の「青騎士」時代の作品、「アラブの墓地(1909年)」です。こんな絵
も描いていたのですね。素朴でややプリミティブな感じがします。
カンディンスキーさんは、その後の抽象絵画時代の作品もありました。こっちの方が、
「らしい」感じかな。妻はカンディンスキーが大好きだったなぁ・・・
(私も見たかったわ~by妻)
それでは最後に「青騎士」グループのトリを飾る、アウグスト・マッケさんの「公園
の中の母子(1914年)」です。題材もタイトルもありふれた感じですが、後ろ姿の母子
を描いたこの絵には、なんだかわからないですが引き込まれます。優れた才能の持ち主
であった画家は、この年27年の短い生涯を終えてしまいます。この絵に描かれているの
は、若くして未亡人となってしまった奥様と息子なのかもしれない・・・
(ちょっと考え過ぎちゃうか?by妻)
最後にもう一つ、モダンアートの傑作を。スイスの著名画家「パウル・クレー」さん
の代表作の一つ「金色の魚」です。これもインパクトありました。
このほかにも、ピカソやらアンディ・ウォーホルやら、スーパースターたちの作品を
含めてたくさんの絵画・彫刻がありましたが、とても一時間では見切れません。ここで
打ち止めです・・・(一時間じゃ中途半端やで~by妻)
さぁ、ハンブルクの観光もここまで。
中央駅に戻って、ドイツの誇る高速鉄道I.C.E(イーツェーエー)に乗って、さらに南
を目指します。(今度はどこに行くんや?つぅか、どこに泊まるんかいな。by妻)
スミマセン、続きます。
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