Bonne(ボンヌ)のブログ

死別者ですが余生は少しでも楽しく

リセット・オロペサ&ルカ・サルシ オペラ・デュオコンサート

  昨日はプロ野球セ・リーグの優勝が決まりました。ヤクルト・スワローズの二年連続 
 優勝です。高津監督の手腕はさすがですね、おめでとうございます。
  
  さて昨日は、上野の東京文化会館までコンサート鑑賞に出掛けました。3連休は毎日
 東京都区部(両国、東銀座、上野)に行っているオッサン・・・

  昨日は関東地方は台風の後で広く晴れ渡り、少し気温も高めでした。前日の銀座と違い
 上野公園は多くの人で賑わっていました。(写真では、そうでもなさそうやけど。by妻)


  この日の演目は、NBS(日本舞台芸術振興会)主催のオペラ歌手によるデュオ・コン
 サートです。米国出身の期待のソプラノ、リセット・オロペサさんと、イタリアオペラ
 界の重鎮?になりつつあるバリトンのルカ・サルシさんです。 ソプラノとバリトンの
 組み合わせというのは珍しいかもしれませんが、イタリア・オペラではソプラノとバリ
 トンの二重唱の名曲はかなりありますので、わりとプログラムが組みやすいのでしょう。

   

  実はイタリアオペラが三度の飯より好きなオッサン(でもワインの方が好きやろ?
  by妻)、コロナ前、いや妻が亡くなる前は世界的なオペラハウスの来日引っ越し公演
 に行くのが楽しみの一つでした。(いったいどんだけ楽しみがあるんや?お金が続か
 ないで!by妻) 特にヴェルディ先生をはじめとするイタリア・オペラは、社会人に
 なってからはお金を貯めてよく行っていました。ちょうど日本はバブル時代で、豪華な
 オペラの引っ越し公演も毎年のようにありました。しかし日本の経済力が弱まるにつれ
 て、海外主要オペラハウスの来日公演は減り、コロナでついにとどめを刺された感じで
 した。しかし、来年2023年には、コロナのため延期となっていたローマ・オペラ座の
 来日公演が復活するそうです。経済力が落ちた日本ですので、もうかつてのような来日
 ラッシュはありえませんが、日本でも海外の著名オペラハウスの生公演が見られる日が
 戻ってきたと思うとほっとします。
  今回来日した二人は、おそらく来年のローマ・オペラ座の公演(ヴェルディの椿姫:
 ラ・トラヴィアータと、プッチーニのトスカ)にも出演する可能性が高いと思われます。
 いずれも欧米のオペラハウスで主役を張る一流の歌手で、オッサンは初めて聴くので、
 とても楽しみです。
  東京文化会館大ホールのロビーには、豪華な生け花?が飾られており、ゴージャス
 なムードを醸し出していました。ここで記念撮影をしている方もたくさんいました。

    

  開演前のホール内です。係の方もいましたが、開演前は大丈夫のようです。しかし
 ちょっとマスクを外したら、すかさず係のおばさんが飛んできて注意されました。😓

 

  オーケストラは東京フィルハーモニー管弦楽団。オペラ歌手の伴奏には慣れていない
 ので仕方ないですが、ちょっと歌手と呼吸が合わないところがあってハラハラしました。  
 肝腎の歌手お二人は、さすが現在の世界トップクラスの実力者ですね。久しぶりに生の
 歌手の声を聞いて(イヤ、つい先日ヴェルディのレクイエムを聴いたばかりでした~)
 昔の感覚が少し戻ってきました。
  まずはオーケストラによるヴェルディ先生の歌劇「シチリア島の夕べの祈り」序曲で
 す。「運命の力」序曲とともに、ヴェルディのオペラの序曲の中では演奏効果が高いた
 めによくコンサートで使われる曲です。幕開けにふさわしい、華々しい演奏でした。
  
  最初に登場したのはバリトンのルカ・サルシさん。今やヴェルディ・バリトンとして
 世界中から引く手あまたの名歌手です。颯爽と登場するなり、得意のヴェルディの歌劇 
 「マクベス」のアリア「哀れみも誉れも愛も」を朗々と歌い上げます。いやぁとてもよ
 く通るいい声だなあ。マクベスは主君殺しの極悪人だけど、こんな歌を聴かせられたら
 応援したくなっちゃうね。(アホ)


  ソプラノのオロペサさんはコロラトゥーラ系の軽めで美しい声で、それに合うような
 演目を主に選んでいましたが、いきなり超難曲のヴェルディの歌劇「ラ・トラヴィアー
 タ」第一幕幕切れのヴィオレッタのアリア「ああ、其(そ)は彼(か)の人か? ~ 
 花から花へ」で始めます。最初はどうなることかとドキドキしながら聴きましたが、
 よく響く美しい声なので、安心して聴いていられました。この手のダイナミックな曲を
 歌う歌手には、金切り声をあげるような生理的にオッサンが受け付けられないような人
 も多いのですが、オロペサさんはオーソドックスで安定した発声・音程で、気持ちよく
 この難曲を歌いきっていました。場内も拍手喝采です。どうやら彼女は、来年来日する
 ローマ・オペラ座公演の予定演目「ラ・トラヴィアータ(椿姫)」の主役ヴィオレッタ
 に抜擢されるようです。
 (下の写真はネットから拝借したオペラでのその場面。オロペサさんではありません。)


  さらに二人の最初のデュオ(二重唱)は、そのラ・トラヴィアータ(直訳すると、道
 を踏み外した女)より第二幕の二重唱です。南仏プロヴァンスの地主ジェルモン(バリ
 トン)さんが、息子が夢中になって同棲している社交界の花形ヴィオレッタ(ソプラノ)
 の邸宅を訪ね、「将来ある息子のために別れてほしい」と迫る場面です。コンサートの
 形式ですが、そこは二人ともオペラでこの役を何度も演じているため、ただ歌うだけで
 はなく、本当にオペラの演技をしているようにしながら歌っていました。なんだか実際
 にオペラの一場面を見ているかのようでした。ソプラノとテノールの二重唱だと、好き
 合った二人が愛を語らうというある意味では単純な内容になりがちですが、ソプラノと
 バリトンの二重唱というのは、大概複雑なシチュエーションで複雑な心境を歌う場合が
 多いので、なかなか面白いのです。(この写真はオペラの場面です。ネットより借用)

  ラ・トラヴィアータかぁ・・・でもオッサンは妻を亡くしてからはヒロインが病気で
 死ぬようなオペラは見られなくなってしまったので、たぶんパスだな・・・(それじゃ
 鑑賞できる演目がめちゃくちゃ少なくなるで~ by妻)


  休憩を挟んで後半は、ヴェルディ以前の少々古めかしいスタイルのイタリア・オペラ
 の演目から、超絶技巧のソプラノのソロ(俗に「狂乱の場」と呼ばれるもの)をはじめ
 有名なシーンが演じられました。
  ドニゼッティの歌劇「ランメルモールのルチア」はロミオとジュリエットのスコット
 ランド版といえますが、ヒロインのルチアとその兄のエンリーコの二重唱は、ちょっと
 重い内容です。敵対する家の息子エドガルドとの恋を諦めさせようと、妹ルチアに嘘を
 ついてだます兄エンリーコ、それを聞いて恋人に裏切られたと思って絶望する妹・・・
 ちょっと嫌な話ですねぇ。この後、誤解が誤解を呼び、もつれにもつれて悲劇が起こり
 ます。イタリア語の歌詞を完全に理解できていないのですが、二重唱には緊迫した二人
 のやり取りが感じられました。
  この後、意に添わぬ男と政略結婚させられたルチアの結婚式で、驚いて駆けつけた何
 も知らないエドガルドはルチアをなじり、ルチアは精神に異常を来たして新婚の夜に夫
 を殺してしまいます。血まみれになって人々の前に現れたルチアが歌うのが、かの有名
 な「ルチア狂乱の場」で、ソプラノ泣かせの難曲です。

  ネットから入手したオペラの場面の写真を掲載しますが、スプラッター映画みたい。


  これをぜひ聴いてみたかったのですが、この日は残念ながら「ルチアの狂乱の場」で
 はなく、ベッリーニの歌劇「清教徒(イ・プリターニ)」のヒロイン、エルヴィーラの
 「狂乱の場」でした。こちらも似たようなシチュエーションなのですが、違う点は最後
 には誤解が解けて恋人と一緒になるというハッピーエンドであり、「狂乱の場」はその
 ままヒロインの死という悲劇に直結する訳ではないので、こちらは幾分気楽に聴いてい
 られます。でも、超絶技巧の難曲であることは一緒です。前半の穏やかな(でも狂気に
 駆られているので凄みがある)部分と、後半の激しく早いパッセージで高音を連発する
 部分を上手に歌いわけていて、キメの高音の伸びもまずまずでした。
  (こちらのエルヴィーラ狂乱の場のシーンもネットにありましたので掲載します。)

  19世紀前半のドニゼッティやベッリーニのオペラでは、この「狂乱の場」はソプラノ
 役の歌手の超絶技巧の聞かせどころとして、敢えてこうした場面を作っていたようです。
 まぁ確かに常人では歌えないような難曲ではありますけどね・・・


  そして続いてはルカ・サルシさんの十八番、ヴェルディの歌劇「リゴレット」より、
 バリトンの名アリア「悪魔め、鬼め!」です。娘を自分が仕える君主に誘惑された宮廷
 道化のリゴレットが、君主の悪事を手助けした手下の廷臣たちに挑みかかるシーンです。
 最初は激高して怒りをぶちまけますが、廷臣たちに相手にされず、最後には涙ながらに
 娘を返してくれと哀願することになります。ドラマティックですが、これまた難曲です。

  

  この写真は、名バリトンのレオ・ヌッチさんだな・・・
  「リゴレット」も最後にヒロイン(娘ジルダ)が死んじゃうから、オッサンはもう
 見ることができないんだよなぁ・・・
 (そんなこと言ってたら、イタリアオペラのほとんどが見られへんで。by妻)


  オペラの舞台もいいけど、こうやってオペラの名場面をちょっとずつ聴けるのも、
 なかなか面白いです。最後は、楽しくロッシーニの歌劇「セビリアの理髪師」から、
 フィガロ(バリトン)とヒロイン・ロジーナ(本来はメゾだけど、ソプラノ編曲版) 
 の二重唱です。フィガロの早口言葉のようなセリフや、ウキウキするようなロジーナ
 の技巧的なパッセージを聴いていると、自然と顔がほころんできます。ロッシーニは
 やっぱり天才だな・・・人を乗せるのが上手い・・・         

       

  お、トーマス・アレンさんのフィガロと、アグネス・バルツァさんのロジーナなんて
 いうキャストの録音があるのですね。サー・ネヴィル・マリナーさんの指揮か。時代を
 感じさせるなぁ・・・(何を一人で感慨にふけっとるんじゃ。by妻)


  あっという間の2時間半。思いのほか楽しめました。拍手喝采が鳴りやまず、ご機嫌
 のお二人はアンコールをたくさんやってくれました。

     

  プッチーニの歌劇「ジャンニ・スキッキ」よりソプラノのアリアと、バリトンのソロ。
  ヴェルディの歌劇「リゴレット」より、第二幕フィナーレの二重唱、そしてドニゼッ
 ティの歌劇「愛の妙薬」よりアディーナとドゥルカマーラの二重唱、でした。最後は、
 オロペサさんとサルシさんがハイタッチです!素晴らしい演奏を有難うございました。
  やっぱりまたオペラにも行きたくなっちゃったなぁ・・・
 (「先立つもの」は大丈夫なんか。あ、ワインを買わなきゃ大丈夫や。by妻)