Bonne(ボンヌ)のブログ

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2022年10月 広島の旅 ④尾道スペシャル ~その3~ 「猫の細道」と小津安二郎監督

  尾道の記事の続きです。
  千光寺公園からの帰りは、坂道と階段を下りて街中に戻ります。結構な急坂ですが、
 時折り海が見える小道は風情があり、途中にはおしゃれなカフェやお店も出ていて、
 観光客にも人気です。でもちょっと足にきます・・・(だらしないの~by妻)

     

  坂道を下る途中に、三重塔が見えてきました。これは有名な天寧寺(てんねいじ)の
 海雲塔(かいうんとう)です。ガイドブックなどでよく紹介される尾道の絶景スポット
 の一つです。うん、確かに絵になるよなぁ。ここで写真を撮影する観光客が多いです。

  塔の中には入れませんが、境内は散策自由です。


  千光寺公園から市街地に下る道はいくつかあるのですが、ちょっと気になった「猫の 
 細道」という道を選びました。

  古い民家が立ち並ぶ狭い小道です。本当に猫がその辺から飛び出してきそうな雰囲気
 です。古民家を改造したと思われるカフェも数軒ありました。妻がいたら絶対にここで
 休憩したいと主張したと思いますが、無粋なオッサンは先を急ぐのでスルーです。 
  なかなか味のあるお店のようですし、たぶんこういうお店からは眺めもいいのだろう
 と思いますが、ご紹介できずスミマセン。(ホンマにオッサンと旅行に行くと、いつも
 こんな感じやで。のんびりお茶したことなんて、ほぼ無いやん。by妻)

  途中からは坂が少し緩やかになりました。早歩きで15分ほどで、あの千光寺山ロープ
 ウェイの乗り場のところに戻ってきました。意外に早く着いたなぁ。(ふつうはもっと
 ゆっくり散策を楽しんでくるところやで、ここは。by妻) 

   時刻は午後3時過ぎ。再び線路をくぐり、尾道本通り商店街を横切って、海の方まで
 向かいます。次の目的地はここ ↓ です。

                 


 「おのみち映画資料館」です。尾道を舞台にした映画作品など、貴重な映画資料が展示
 されています。しかし写真撮影はNGでしたので、内部の写真はネットから借用します。

  この資料館の中心は、なんといっても小津安二郎監督の作品コーナーです。そうです、
 尾道を舞台にしたあの名作『東京物語』に関する資料など、興味深い展示があります。


  オッサンはあまり映画を見る方ではなく、たまにテレビで気になる作品があると見て
 いる程度なのですが、昔の味のある映画には感銘を受けることしばしばです。
  1953年制作の『東京物語』も、テレビで見て強烈なインパクトを感じ、印象に残って
 いる作品です。小津監督が、東京に住む子供たちを訪ねて上京する老夫婦が住む場所を、
 ここ尾道に決めたのは、偶然ではなかったと思います。 
  東京の下町と、瀬戸内の海を臨む尾道・・・対照的な場所を繋ぐ家族のストーリー。
 映像の秀逸さ、俳優たちの演技の巧みさもあり、この映画は日本のみならず、海外でも
 とても高い評価を受けているそうです。 


  下の写真は、右から笠智衆さん(主役のおじいさん:周吉)、原節子さん(戦死した
 次男の嫁:紀子)、東山千栄子さん(おばあさん:とみ)です。忙しい町医者の長男の
 家、下町の長女の家に居づらくなって、一人で暮らす次男の嫁のアパートで、老夫婦が
 ささやかなもてなしをうける場面ですね。笠智衆さんの優しげなまなざしに、涙です。

  昭和28年、まだ戦後の影を引きずるなかで制作された時代を代表する名作映画の舞台
 に尾道が選ばれたということは、尾道の方々にとっても誇らしいことだと思われます。
 尾道には、この映画のロケ地となった場所がいくつかあるようで、映画ファンはそうし
 た場所を訪ね歩くそうです。おそらく小津さんのファンにとっては聖地なんでしょうね。


  後半では、尾道に帰った後すぐに病気でとみが亡くなり、子供たちが尾道に帰省する
 のですが、葬儀が終わるとすぐに帰ってしまう長男、長女、三男に対し、尾道に残って
 いる次女は「薄情だ」と憤慨します。それをなだめ、義父周吉に寄り添う次男の嫁。
  もはや仙人のような雰囲気を漂わせる昭和の名優、笠智衆さん。そして戦後の銀幕の
 アイドル原節子さんです。ロケ地は、海が見える、線路の北側のお寺のエリアかな?

  小津監督は、上記二枚の写真のように、ややローアングルでの映像で、視聴者の視線
 を登場人物や対象物へ自然と導くようにしました。そして固定カメラでの映像を多用し
 て、登場人物や背景の自然な動きを描写したようです。「奇をてらった、あざとい演出」
 とは180度異なるアプローチです。しかし、そのように工夫して撮影されたモノクローム
 の映像は、見る人の心を自然にスクリーンの中に引きずり込んでいるような気がします。
  なんだか、もう一回見直してみたくなります・・・ 


  資料館には映画のポスターや撮影シーン、映画の名場面の白黒写真などが展示されて
 おり、興味深い展示でした。他にも小津監督の名作である「晩春」「麦秋」などの展示
 もありました。いずれも、戦後まもない日本の等身大の姿を見せてくれる名画ですね。     
  二階の展示コーナーには広島県出身の新藤兼人監督の「裸の島」(三原市沖に浮かぶ
 宿禰島で撮影)などの資料、古き良き時代の映画ポスターなどが展示されています。
  しかしここで不思議に思うのは、尾道を舞台にした映画といえば欠くことのできない
 「尾道三部作」を世に送り出した名監督、大林宣彦さんの作品の展示がないことです。
 大林監督は正真正銘の尾道出身で、尾道を愛することにかけてはどの映画監督にも負け
 ないはず。・・・どうも大人の事情、があるようです。大林監督と、尾道市の関係者、
 尾道商工会議所が絶縁状態らしいのです。何が理由かは存じませんが、大変残念なこと
 です。「転校生」「時をかける少女」「さびしんぼう」の尾道三部作は、オッサンたち
 のバブル世代前後の人たちには人気が高いのです(話は非現実的だけど、そこがまた、
 映画らしくていいという声も)。 せっかく尾道に来て、市営のおのみち映画資料館に
 入ったのに、大林監督の足跡が皆無というのは、がっかりですよね。どちらにも言い分
 はあるのだと思いますが、変なところで意地を張らないで和解をして頂き、尾道の素晴
 らしさを発信できるようにしてほしいものです。


  まぁ、オッサンは『東京物語』の展示を拝見させていただいただけで十分満足でした。
  尾道を舞台に素晴らしい作品を残してくれた小津安二郎さん、ありがとうございます。

        


   尾道スペシャル、もう1回続きます・・・(長いな・・・by妻)