2024GW スペイン・フランスの旅 ⑯マドリードの王立歌劇場で「マイスタージンガー」を鑑賞・・・
・・・の前に、本日はタイガースが珍しく終盤に打線が爆発し、8-1の快勝です。
オッサンも久々に心晴れ晴れ・・・😀(いつまで続くかの~? by妻)
さて、停滞していたGWの海外旅行の記事を続けます。
2日目の夜は、満を持してマドリードのスペイン王立歌劇場でオペラ鑑賞です。半年
以上前にスケジュールを組んだ時、マドリードかボルドーかパリでオペラが鑑賞でき
たら良いなと思っていたのですが、ちょうどマドリードでワーグナーの大作の、楽劇
「ニュールンベルクのマイスタージンガー(直訳すると、歌の親方)」の上演がある
と知り、しかもネットでチケットの予約ができるということで、オッサンはコーフン
して早々にチケットをゲットしておりました。まだ1ユーロが150円以下だった頃に
購入したので、今思えばとてもお得でした。最近は海外のサイトでも、日本語訳での
表示も部分的には可能な場合が多く、スペイン王立劇場の予約サイトもそうでした。
お陰様で多少マゴマゴしましたが、スペイン語も英語もわからないオッサンでもなんと
かチケットを確保できました。電子チケットなのでスマホに格納し、現地ではQRコード
でチェックする仕組みです。
スペインはやはりオペラが盛んな他の国(イタリア、ドイツ、オーストリア、英国、
フランス等)よりもチケットは割安な感じでしたので、せっかくなので平土間席(1階
の、舞台が良く見える席)を購入していました。日本で外来オペラを鑑賞する時の半分
以下の値段でした。まぁ絶対額は安くはないですが、相対的にはかなりお得でした。
しかし、せっかくならスペインらしいオペラ(スペインを舞台にしたオペラは数多く
あるのです。ロッシーニの「セビリアの理髪師」、ヴェルディ先生の「ドン・カルロ」
や「イル・トロヴァトーレ」「運命の力」、ビゼーの「カルメン」など)がいいなあと
思っていたのですが、よりによってドイツオペラの中のドイツオペラという作品なので
すよね~(贅沢言うな。by妻)
ということで、開幕時間の午後5時少し前に、王立劇場に到着したオッサン。
ソル広場から、王宮の方に向かって徒歩10分ほどですので、便利なところにあります。
劇場の前には、着飾ったお洒落な男女が集まっていて華やいだ雰囲気です。
もう開幕時刻が迫っていますので、オッサンは電子チケットをチェックしてもらって、
早速劇場内に入ります。おぉ~!
ウィーンやミラノ、ロンドンやパリの豪華なオペラハウスのロビーには及びませんが
やはりヨーロッパのオペラハウスは、NHKホールや東京文化会館とは雰囲気が違います
ね。(当たり前) 現地でオペラを聴くのは何年振りかなぁ・・・妻と行った2001年の
ウィーン国立歌劇場以来かな・・・そうか、もう20年以上前なんだな・・・
お、ロビーのバーは既に営業中です。ペリエ・ジュエのシャンパーニュがあります。
ちゅうことで、開演直前10分前にシャンパーニュでカンパイするオッサン。😝
開幕前のロビーでは着飾った紳士淑女が談笑していて、香水の匂いが漂います。うん
これもヨーロッパの雰囲気じゃぁ(アホ)。旅行中のオッサンも最低限のスーツと革靴
でなんとか浮き上がらないようにしました。まぁ平土間席に座りますのでね・・・
さて、いよいよ開幕を知らせるブザーがロビーに鳴り響きます。オッサンはあわてて
席に向かいます。馬蹄型をした、ヨーロッパの伝統的な劇場のスタイルですが、規模は
やや小さく、ウィーンやミラノ、ロンドンやパリ、ベルリンの劇場よりは客席数は少な
いと思います。日曜日のためか、この日は満員でした。
オッサンの席は1階の平土間席の左側、桟敷席に近い場所でした。桟敷席は雰囲気は
ありますが、正面でないと舞台全体が見えないのです。舞台に近い席はかなり見づらい
ので意外に安いみたいです。
開演前、客席の灯が消えるまでは撮影OKでしたので、舞台の写真も撮影しました。
舞台の全体が見渡せる、かなりよい席でした。どうせ見るなら、いい席がいいですね。
それでは休憩を挟むと約5時間の長丁場となる大作、マイスタージンガーの開幕です。
この第一幕への前奏曲はとても有名ですので、オッサンもワクワクしました。オペラの
主要な場面で使われる音楽(ライト・モチーフ)をちりばめていますので、とても印象
的です。この曲は単独でコンサートでもよく演奏されます。
ということで、今は亡きジュゼッペ・シノーポリさんの指揮で、ワーグナーゆかりの
シュターツカペレ・ドレスデン(ドレスデンのザクセン国立歌劇場管弦楽団)の秀逸な
演奏を参考までに掲載いたします。やっぱりいいよなぁ~
Wagner Die Meistersinger von Nurnberg Overture by Sinopoli, SKD (1998)
しかし、第一幕からしてかなり長い。
ニュールンベルクの街では、町の名士でもある「歌の親方」たちが主催する歌合戦
の話題で持ち切りです。そこへ、元貴族ですが諸国行脚の旅をしている若者が現れ、
たまたま通りがかった若い女性を見初めて恋に落ちます。(いきなり何じゃい?)
女性(エヴァ)もまんざらでもないようですが、彼女の父は「歌の親方」の一人。
父は自分の最愛の娘を、歌合戦の勝者に求愛させようとしていたのです。そのことを
知っているエヴァは、この若者が歌合戦になんとか参加できるようにして、優勝して
もらおうとします。・・・おい、そんなに簡単にはいかないぞよ・・・というのが世
の常なのですが、なんせオペラは「何でもあり」なんですよ。😆 実はこの若者は、
歴史的な吟遊詩人として名を遺す、「ワルター・フォン・デア・フォーゲルワイデ」
に師事した、将来を嘱望される人材だということなんです。ギャフン(死語)😝。
つまり、その辺をうろついているただのゴロツキではなく、由緒ある家柄に生まれ、
才能に恵まれ、当代一の大歌手に学んだ逸材・・・ということなんですね。もう好き
にしなはれ、ワーグナーはん。(ワーグナーは作曲だけでなく、この台本も彼自身が
書いたのです。もう好き放題ですな・・・😆) ま、そういうことにでもしないと、
どこの馬の骨かもわからないポッと出の若者がいきなり歌合戦で優勝するのは変だ、
ということになりますからね・・・
ま、無理筋のような気がしますが、この若者ワルターさんは、エヴァさんの願いで
ニュールンベルクの街の「歌の親方のトップ格」とみなされるハンス・ザックスさん
(実はこのオペラの主役)に突貫工事で歌合戦の作法を学び、ザックスさんの推挙で
歌合戦に出場できることになります。・・・まぁ、いいじゃないの・・・
しかし邪魔者が現れます。「歌の親方」の一人ですが、年甲斐もなくエヴァに恋する
ベックメッサーというメンドクサーなオッサンが現れ、ワルターさんの歌を「歌の親方
の決めた規則を守っていないから失格だ」と酷評して侮辱します。コイツが歌合戦にも
出場するというので、対策が必要になるのです。さて、どうなることやら?
ということで、第一幕終了までで既に一時間半を越えています。イタリア・オペラ
(例えば「トスカ」)だったら、全幕が終わっているかもしれませんぜ・・・
第一幕終了の時刻は午後6時40分。ここで20分の休憩です。劇場の外に出ることも
できますので、オッサンは外の空気を吸いに出ました。まだこの時刻では外は明るい。
劇場近くのカフェで少し休憩してから、席に戻りました。ちょっと暑くなってきたの
で、スムージーを頼みました。冷たくて美味しかったです。
さて第二幕は・・・もう長くなるからやめましょうか・・・
すったもんだあった挙句、騎士ワルターさんも、親方ベックメッサーさんも、エヴァ
に求愛できる権利を賭けた歌合戦に参加することになりました・・・そして・・・
第三幕。歌の親方であり、エヴァの願いを聞いて騎士ワルターを特訓して歌合戦への
出場をサポートしてきたハンス・ザックスさん・・・
彼は妻に先立たれた「やもめ」で、友人の娘であるエヴァを可愛がってきたのですが
実はひそかにエヴァを愛していたのです。明日の歌合戦(彼は審査員)を前に、複雑な
心境を吐露します。彼にも歌合戦に参加する権利、つまりエヴァに求愛する権利はある
のですが、彼はエントリーしませんでした。エヴァがあの若者にぞっこんであることを
知っていたこと、そしてその若者が才能ある逸材であることを見抜いたこと、が理由で
す。しかし理性ではそうであったとしても、彼の心は揺れ動いていました・・・
このハンス・ザックスさんのソロを聴いて頂ければお分かりになるでしょう・・・
Meistersinger: „Wahn, Wahn, überall Wahn“ • Bernd Weikl als Hans Sachs (1984)
オッサンも、ハンス・ザックスさんがこのオペラの主役であることをここで確認した
のです。(ヴェルディ先生のオペラ:ドン・カルロのフィリッポⅡ世のアリア「一人寂
しく眠ろう」と比較されることも多いのですが、人間性が違いますね~)
そして、満を持して歌合戦に臨んだワルターさん。高揚した面持ちで朗々と、エヴァ
への愛を歌い上げます。親方衆も、町の民衆も、これまでに聴いたことがない独創的で
自由な旋律でしたが、彼の歌は聴く人すべての感情を揺さぶり、感動を与えました。
「ニュルンベルクのマイスタージンガー」 から 優勝の歌 ”朝はばら色に輝き” ベン・ヘップナー
もちろん、彼が優勝しました。ストーリー的にはそれ以外ありえませんしね。
しかし優勝者に与えられるマイスタージンガー「歌の親方」の称号を、彼は拒否して
しまうのです。これはまずいです。自分を認め、評価してくれる方の行為を無にしては
いけません。エヴァへの求愛の権利はあくまで「副賞」であり、誇りあるマイスターに
とっては「自分たちの仲間入りを認める」ことほど名誉なことはないはずなのです。
それを否定するとは・・・会場は一気に冷や水を浴びせたように静まり返ります・・・
そこへ現れたのが、審査委員長のハンス・ザックスさん・・・意気軒高な勝者ワル
ターに諭すように歌いかけます。勝者のしるしを拒否してはなりません、と・・・
マイスタージンガーのトップとしてこの場の混乱を収め、可愛いエヴァの願いである
ワルターとの結婚を祝福するための、彼の思いを込めた歌が朗々と響き渡ります。
Wagner: Die Meistersinger von Nürnburg - Finale
いやぁ、ホンマにえぇ人や。ワーグナーのオペラに登場するバリトン役の方は、彼
だけでなく「タンボイザー」のヴォルフラム、「トリスタン」のマルケ王など、お人よ
しともいえる程のいい人ばかりです。きっと、ワーグナーが自分とは正反対の人を描き
たかったのでしょう。😆
ザックスさんの訴えに感動した人々がマイスタージンガーを称える中、ワルターさん
も素直にザックスさんの諫めに従い、マイスタージンガーの称号をうけることになりま
した。これでようやくエヴァへの求愛を皆が祝福できるようになりました。これで万事
めでたしめでたし・・・です。
いや、ハンス・ザックスさんにとってはどうなんだ・・・はい、最後の最後。エヴァ
が勝者に与える月桂冠を、ワルターではなくザックスさんの頭に被せるのです。これは
泣かせる演出だ・・・不意に自分の頭上に月桂冠を被せられたことに驚くザックスさん。
エヴァの感謝の気持ちだとわかりつつも・・・
オッサンも同じ男やもめなんやから、ザックスさんを見習って、仕事に励み、少しは
お酒を控えるとか禁欲的な生活をしたらどうや?どうせ無理やろうけど・・・(by妻)
しかしこの劇場の演出は、最後の最後で衝撃的な幕切れでした。ハッピーエンドの
はずが、やはりワルターがザックスの言うことを聞かず、それに絶望したエヴァが、
それぞれ舞台の左右の袖に、幕を引きながら引っ込んでしまいます。えぇ?これって、
ハッピーエンドじゃないよね・・・感動的なエンディングだと思っていたのに意表を
突かれてしまい、ちょっとモヤモヤが残りました。ハッピーエンドの方が、気分よく
お客さんが帰途につけると思うんですけど・・・
演奏自体はかなりレベルが高く、5時間近い長丁場でしたが退屈せずに楽しむこと
ができました。終演後のカーテンコールは写真撮影OKでしたので・・・
真ん中の女性がエヴァ(ソプラノ)、左が若者ワルター(テノール)、右が主役の
ハンス・ザックスさん(バリトン)です。ブラーヴィ!(ブラーヴォの複数形)
いやぁ、やはり生の舞台で大作オペラを鑑賞できるなんて、幸せです。時間とお金を
かけてでも観に来て良かった~
長いカーテンコールが終わり、劇場を出た時には午後10時半でした。やはりオペラ
ハウスは夜が似合いますね・・・
すぐ近くにある王宮もライトアップしていました。この日の朝10時にはあそこを見学
していたんですよね~。既にだいぶ前のことのような気がしています・・・
長時間、集中して鑑賞したのでいささか疲れたオッサン、一駅だけですが地下鉄に
乗ってホテルのあるソル広場まで戻りました。
今回も、いつもとはちょっと違いますが、マニアックな記事でスミマセン。
さらに続きます・・・
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