Bonne(ボンヌ)のブログ

死別者ですが余生は少しでも楽しく

久しぶりにオペラを鑑賞してきました・・・

  今日は、朝からアルペンスキーの世界選手権の録画やスキージャンプの女子ワールド
 カップの試合の録画などを見ていました。白熱した試合に朝から興奮してしまいました。
  これを記事にすると、またどなたも付いて来られないマニアックな記事になりそうで
 すので、本日は自重いたします。(でも、いつかは書くんやろ?by妻) 
  
  そして昼からはお出かけです。久しぶりに新国立劇場に参りまして、オッサンが敬愛
 してやまないジュゼッペ・ヴェルディ先生の絶筆となった、歌劇「ファルスタッフ」を
 鑑賞いたしました。

  新宿から京王新線(乗り換えがわかりにくい)で一駅の初台という駅に直結している
 東京オペラシティの中核となるのが新国立劇場です。なぜ「新」なのかといいますと、
 古典芸能の殿堂である国立劇場に対して、新しくできた国立劇場という意味でしょうか。
 バブル絶頂期の、飛ぶ鳥を落とす勢いであったかつての日本で、「日本にも欧米先進国
 並の常設のオペラハウスを造るべきだ」ということで、鳴り物入りで作られたものです。
 しかし、結局欧米の主要オペラハウスのような常設のオペラ団体は造られず、その場所
 もちょっと都心からは外れた場所になってしまいました。いろいろなしがらみがあって
 仕方がなかったと思われますが、オッサンとしては皇居の一郭を解放して、都心の一等
 地に建設してほしかったと思っています。そして、専属のオーケストラを持たせ、外来
 オペラハウスの引っ越し公演もここで実施してほしかったところです。つまるところ、
 欧米のオペラハウスは、その国・都市の顔の一つなのです。日本あるいは東京が世界に
 冠たる文化都市であろうとするならば、中途半端に妥協をしてはいけませんでした。
 (要は現在の姿が中途半端やと言いたいわけやな・・・何を偉そうに・・・by妻)


  しかし、オペラハウス自体は機能的で現代的な建築で、オペラの上演にふさわしい箱
 となっているのは間違いないですね。

  本日の公演の案内が出ています。メインのオペラパレスの他にも、中劇場と小劇場が
 あり、今日は新国立劇場の研修生の公演と、ミュージカルも上演されていました。

    

  現在、新国立劇場には専属の合唱団がありますが、専属のオーケストラはありません。
 本日のファルスタッフでは東京交響楽団のオーケストラがピット(舞台の前に掘り下げ
 られた、オーケストラが入る場所)に入ります。 


  あれ? 入口にはこんなもの ↓ が・・・ (オッサン、だいぶ変わったな。by妻)

                  

  新国立劇場のミュージアムショップは、小さいながらも充実していました。舞台公演
 の写真(1枚300円)や、記念グッズ、そしてイタリア・オペラの殿堂ミラノ・スカラ
 座との縁が深い出版社リコルディ社のオペラの全曲スコアも販売されていました。
  オッサン、大学生の頃にヤマハ銀座店で数冊を購入して、オペラのCDを聴きながら、
 スコアを見ていました。そのお陰で、少しイタリア語が理解できるようになりました。
 (せっかく覚えても、日本で言うと明治時代の言葉やけどな・・・by妻)
 懐かしいねぇ・・ちなみにオッサンが持っているのは、すべてヴェルディ先生のオペラ、
 「シモン・ボッカネグラ」「仮面舞踏会」「イル・トロヴァトーレ」です。
 (そんなことを書いても一般の方々はなんのことやらわからんで・・・by妻)
  まぁ、ここで販売しているのは超メジャーな作品ばかりでしたけどね・・・ 

     


  開場は13時、開演は14時とゆとりがあります。オッサンは少し早めに到着しまし
 たので、バーで一杯ひっかけていきます。(またか・・・by妻)

  


  さきほどは偉そうなことを書いていましたが、新国立劇場は設備や運営において注目
 すべき努力を行っていました。その一つがコレ。若者向けの格安席の提供です。演目に 
 関わらず、25歳以下、39歳以下の方だけが購入できるのです。この劇場を今はやりの?
 サスティナブル(持続可能)にするためには、将来のファンを育てるということが絶対
 に必要ですからね。このような企画はぜひ続けて頂きたいですね。 


  オッサンの席は安い3階席ですので、階段を登っていきます。おぉ、3階や4階席
 の通路からもロビーが見えるようになっています。高所恐怖症の方はちょっとコワイ
 かも。(つまり、オッサンがコワイっちゅうことやな・・・by妻)

  オッサン、新国立劇場は3回目だと思うけれど、たぶん15年ぶりくらいなのでどんな
 感じだったのか忘れている感じです。設立は1997年、もう25年も経つのか・・・

  各階の脇にはコインロッカーがあって、ちょっとした荷物ならクロークに預けなくて
 もここに収納すればよいので便利です。座席への入り口もたくさんあって、混雑緩和に
 役立っているようです。とても機能的で、快適さを訴求した感じがします。


  客席から見た舞台はこんな感じです。客席は、欧米の歌劇場のような馬蹄形の形を模
 しているようです、北ドイツの近代的なオペラハウスに近い造りかなぁ。 

  オッサンの座席付近からはこんな感じ ↓ に見えます。うん、オペラハウスのようです。
 (オペラハウスやんか、当たり前やろ。by妻) 

  ちょっと気になるのは、意外に座席数が多くないことです。調べると、やはり1,800席
 ほど。欧米の主要歌劇場のキャパは3,000人近いことを考えると、やや少なめです。
  あ、そうか。だから海外の著名オペラハウスの引っ越し公演をここでは上演できない
 のですね。(この座席数では、興行的にペイできないということです。)
  あ、そうか(またか。by妻)。これが建設当時に国内派?と海外派?が争った理由な
 のですね・・・結局国内派が勝ったというわけか・・・


  どうでもいいけど、いつになったらオペラの話になるんじゃ~(by妻)
  あ、スミマセン。ついつい能書きが長くなってしまいましたね・・・


  「ファルスタッフ」はヴェルディ先生の最後のオペラ作品で、作曲家が御年80歳の
 時の作品です。原作はヴェルディ先生が敬愛するシェイクスピアの喜劇「ウィンザーの
 陽気な女房たち」です。それを19世紀イタリア文学を代表する天才アッリーゴ・ボーイ
 トさんが脚本化し、ヴェルディ先生が音楽で見事に彩りを添えました。時空を超えた、
 世界史に名を刻む3人の天才のコラボレーションなのですね!
  オッサンはヴェルディ先生の大ファンなので、ミュージアムショップで売っていた、
 ヴェルディ先生のクリアファイルを購入してしまいました。(それだけかい!by妻)

     


  イタリアオペラ界の巨匠としての名声を確立し、晩年には独立したばかりのイタリア
 王国の国会議員になるなど、既にイタリア人の誇りというべき存在となっていた先生。
 誰もが「ご隠居」されたと思っていたその時、なんと喜劇オペラ(オペラ・ブッファ)
 を引っ提げてミラノ・スカラ座に登場しました。時は1893年2月9日、130年前か・・・
  前作のオテッロ(オセロー)が大成功を博してから6年後、再び先生が筆を執る気に
 なったのは・・・やはりボーイトさんの力ではないかと思います。先生が尊敬してやま
 ないシェイクスピアの作品を上手にオペラの脚本に仕立て上げ、先生に「どうです?」
 と見せたのでしょう。文学者であり、脚本家でもあった文才ボーイトさんがヴェルディ
 先生を「その気」にさせたのは間違いないでしょう。


  「ファルスタッフ」の詳しい情報は、以下のウィキペディアを参照ください。
  (オッサン、最近ちょっと手抜きが常態化しとらんか? by妻)



  年老いたけれどもスケベ心と食い意地は現役並みの騎士ファルスタッフと、当時英国
 で力をつけてきた小市民の間に起きたドタバタ劇なのですが、さすがにボーイトさんの
 脚本は本当によくできています。オペラというよりも「音楽の付いた演劇」と言っても
 いいほど、上演には演劇的要素が必要とされます。今回の出演者たちは主要な役どころ
 は本場イタリアの歌手で、さすがに見せ場をよくわかっているなと思いました。それに
 対して、脇を固める日本人歌手は、歌の実力はまずまずでしたが演技の面ではちょっと
 一歩を譲る感じでした。まぁこの演目を演じる機会はそうそうないですから仕方ないか。
  そうそう、この舞台の演出は、これまた名演出家の故ジョナサン・ミラーさんでした。
 シンプルですが機能的な舞台装置、ちょっとコミカルでウィットに富んだ演出です。
 フランドル風(フェルメール風かな)を思わせる室内(床面)、斜めに設置されて場面
 転換にも適した舞台装置は印象的でした。


  肝腎の歌手は、主役ファルスタッフ役にイタリア人のニコラ・アライモさん。
 朗々たる声と、お茶目な演技で圧倒的な存在感でした。

 
  今回、改めて感じたのは、ボーイトさんもヴェルディ先生も「言葉」を非常に重視
 しているな、という当たり前のことでした。ボーイトさんの書いた脚本に、ふむふむ
 と先生が音楽をつけるのですが、そこはまさに以心伝心。登場人物たちが語るセリフ
 は実に含蓄があり興味深いのですが、そこに先生が見事に音楽でフレーズを付けます。
 ところどころパロディもあって、なんだか作曲しながら二人で楽しんでいるのかなと
 いう気がしないでもありません。
 (例:先生の有名なオペラ「椿姫(ラ・トラヴィアータ)」で主人公ヴィオレッタが
 つぶやくセリフ ”Povera Donna!”(哀れな女よ!)を、喜劇の狂言回し役の女性
 (クイックリー夫人:この名前もスゴイ。速攻夫人か?)にしゃべらせます。)


  欲とスケベ心を出して、金持ちで美貌のフォード夫人アリーチェに言い寄るファルス
 タッフ殿、しかし、ウィンザーの陽気な女房たちの策略に嵌められ、最後は洗濯籠の中
 に押し込まれて、挙句の果ては窓からテムズ川に投げ捨てられてしまいます・・・
  こりゃあんまりですね~ ファルスタッフの後ろで煽るのがクイックリー夫人。

  このオペラでは、「名誉」「金」「愛」が主要な要素となっていますが、順番を付け
 ますと、「名誉」<「金」<「愛」ということになります。これが世の常なのかな?


  あ、新国立劇場の舞台のダイジェスト映像が出ていましたので、ご参考までに。
  どうやら2015年が初演だったようで、今回はそのリヴァイヴァル上演のようです。
  
新国立劇場「ファルスタッフ」ダイジェスト映像が到着!


  おぉ、ネットで検索をしたら、オッサンが愛聴していた全曲映像がありました。
 1982年に演劇の本場、英国ロンドンのロイヤル・オペラハウスでの上演。指揮者は、
 イタリア・マフィアの総元締めちゃう、当時のイタリア音楽界のドン、貫禄抜群の
 カルロ・マリア・ジュリーニ氏。
  
Falstaff G.Verdi d.C.M.Giulini 1982 sub ita


  そしてキャストが凄いのです。
  主役のファルスタッフにバリトンのレナート・ブルゾン、金持ちの小市民フォードは
 同じくバリトンのレオ・ヌッチ。いずれもヴェルディのオペラで主役を張る名歌手。  
  女性陣も負けずに豪華絢爛。フォード夫人アリーチェ(アリス)には美貌のソプラノ、
 カーチャ・リッチャレッリ様。クイックリー夫人には超ド級のメゾソプラノの実力者、
 故ルチア・ヴァレンティーニ=テッラーニさん。アリーチェの娘ナンネッタには、天使
 の歌声バーバラ・ヘンドリックスさん・・・
  第三幕フィナーレの最後のフーガの合唱は、まさに圧巻です。(上の映像では2時間
 8分くらいから始まります) お時間があれば、まぁ聴いてみてください。オッサンが
 この場面をビデオで見ていると、台所で聴いていた妻が驚いてテレビの前にやって来ま
 した。 あの、危ないから包丁は置いてきてくださいまし・・・(アホ)。
 (余談ですが、数日後に妻の実家で、妻の姉も同じようにテレビの前に飛んできたそう
 です。このフーガの凄さは、音楽を学んでいる人にはちょっとした驚きのようでした。) 
  
  またこのセリフがいいのです。
  「世の中、全部冗談だ。人間はみんな、道化師として生まれてくるのだ。」
  なるほど、そうかもしれませんね・・・これはシェイクスピアではなくボーイトさん
  の創作なのかな・・・


  そしてヴェルディ先生の書いた最後の音楽、最後のセリフは、”Tutti Gavati!”
   「全部冗談なんですよ~!」😝😝😝



  どうでもえぇけど、結局マニアックな記事になっとうで・・・(by妻)