Bonne(ボンヌ)のブログ

死別者ですが余生は少しでも楽しく

久しぶりに関西の旅 ④奈良:興福寺の駆け足観光 ~1~

  午後3時に[奈良駅に到着して、タクシーで奈良公園の近く(中?)の猿沢の池まで
 行きました。 一本早い電車に乗ることができて約1時間、奈良で観光する時間が確保
 できたため、世界遺産の興福寺を見学するためです。何年ぶりかなぁ・・・
  タクシーの運ちゃんは気さくな方で、当然ながら関西弁。つられるようにオッサンも
 会話が関西弁になりました。そういえば妻が居た頃は、家庭内は関西弁だったなぁ。
 (オッサンは人の影響を受けやすいんやで、by妻。イヤ、あんたがずっと関西弁で話す 
 のをやめないからやで、by私。まぁ関西弁の方がしゃべりやすいのかもしれません。)
  運転手さんいわく、JR奈良駅の歴史的な駅舎は新しい近代的な駅舎を建設する時に、
 少しだけ移設したそうです。取り壊さずに残すという決断をJR西日本がしたようです。
 写真を撮り忘れたのでネットから転載させていただきます。屋根にはお寺の塔のような
 ものがあって、石造りの重厚な建築です。

  平成15年(2003年)までは現役の駅舎だったので、オッサンが奈良県内に住んで
 居た頃(1997年まで)は見慣れた駅舎でした。この建物は昭和9年(1934年)に竣工、
 現在では近代化産業遺産にも指定されています。JRの高架化に伴い一時は解体の危機
 になりましたが、他に類を見ない貴重な建築の保存を望む声が多かったため、元の位置
 から約18mを曳家工法によって移動し、奈良市総合観光案内所として再利用されること
 に なったそうです。英断ですね。京都駅みたいに完全に近代的建築になってしまうと、
 (あれはあれで世界的名建築家の作品だけど)古都の情緒が感じられないですからね。
 もっとも今の奈良駅は左手後方に見える近代的で機能的建築に様変わりしていますが。


  タクシーはJR奈良駅から奈良公園の方に向かって東西に延びる三条通りを抜けていき
 ます。ここも昔よく通ったなぁ。JR奈良駅から奈良公園の近くの上三条町の交差点まで
 は、以前よりもきれいに整備されている感じです。ネットから写真を拝借しました。、
 後ろにJRの高架線路が見えます。あちらが西側です。この辺りはまだそれほど賑やかで
 はありません。あ、そういえば昔よりも歩道が広くなった(車道が狭くなった)ような
 気がします。当然、車は一方通行(西から東へ)となっています。 

  そして奈良公園に近づくと活気が出てきます。JR奈良駅よりもはるかに乗降客が多い
 近鉄奈良駅からつながっている細長いアーケードの商店街(小西さくら通り、東向通り)
 が三条通にぶつかる辺りになると、観光客や商用の人たちでかなり賑わってきます。
 有名な奈良漬けのお店や、柿の葉寿司のお店など古都奈良らしい雰囲気が感じられます。
 背後には若草山が見えますね。仕事で奈良に行った時にこの辺りはよく通りましたので
 ちょっと懐かしいです。ビジネスホテルがたくさんできたりしていましたが、基本的な
 雰囲気は昔(20数年前)とあまり変わらないように感じました。

  この狭い三条通を抜けて、奈良公園の西端にある猿沢の池まで参りました。ここで
 タクシーを降ります。JR奈良駅からの料金は900円くらいでした。
  猿沢の池はそう大きくはありませんが、周囲の遊歩道を散策(やジョギング)する人
 もいて憩いの場となっています。後方に著名な奈良ホテル、若草山から春日山が見えて
 います。あの奈良ホテルに泊まれたら、古都奈良の観光にはとても便利だと思います。

  そして振り返ると、池越しに五重塔が見えます。とても絵になる風景ですね。
 そう、世界遺産にも指定されている南都奈良を代表するお寺、興福寺の五重塔です。

  この日の奈良市内観光は、この素晴らしい興福寺の見学に充てることにしました。
 大半の観光客は近鉄奈良駅から奈良公園に向かう登大路側(北側)から入ると思います
 が、オッサンは猿沢の池のある南側の門から入ります。
  ちょっと記号的な地図ですが、境内は以下のようになっています。

  南側の猿沢の池から短く急な階段を上ると、重要文化財の南円堂が見えきます。
 興福寺の中では比較的新しい建築で、現在の建物は江戸時代の1789年に再建されたもの
 だそうです(四代目)。元々は平安時代の813年、興福寺が摂関家・藤原氏の氏寺だった
 時に創建され、摂関家や春日大社ともゆかりのある由緒あるお堂だったそうです。

     

  再建にあたっては、後に登場する八角形の北円堂(鎌倉時代初期の建造物)を参考に
 したそうですが、江戸時代の特徴として正面入口(東側)に拝所のような構造物を追加
 したユニークな建築となりました。 

     


  残念ながら内部は通常は非公開で、毎年10月17日の1日だけ、本尊である「不空羅策
 観音菩薩像(国宝)」を拝むことができるそうです。図録で見る限り、素晴らしい仏像
 です。なので、ネットから写真を拝借して載せておきます。
  鎌倉時代(12世紀)に、あの運慶のお父さんの仏師康慶が造った力作です。写真では
 わかりづらいのですが、眉間に縦長の「目」があります。目が三つ、手が6本の観音様
 ですね。また豊かな唇をされており、優しそうで安らかなお顔をされています。滑らか
 な曲線美と優雅なたたずまいに魅了されます。ぜひ一度、リアルで拝みたいものです。
 でも10月17日指定かぁ、その日は激混みになりそうですね。ちなみにヒノキ材を使った
 寄木造の木彫仏像です。        

       

  南円堂の近くには、猿沢の池から見えた三重塔(国宝)があります。こちらは坂の
 下にありますので、もう一度階段を下りて細い脇道を入っていきます。
  ここからは南円堂の後ろ側がよく見えます。あ、こんなところに奈良公園の主である
 鹿がいました。どちらも雌のようですね。

  国宝の三重塔は興福寺最古の現存建築で、鎌倉時代初期(12世紀末)の本瓦葺・木造
 建築です。ここも残念ながら内部は非公開なので、外観だけの見学です。
 低い場所にあって小ぢんまりしているため、つい見落としがちですが、小さいながらも
 均整がとれていて美しい塔です。800年以上も前の木造建築が現存しているのはすごい
 ですね。とても貴重な歴史的遺産です。

      

  再び坂を上って、今度は「北円堂」に参ります。ここも三重塔と同じく鎌倉時代初期
 に再建された木造建築が現存しており、国宝に指定されています。美しいフォルムです。   

  残念ながらここも通常は一般非公開で、柵の外から外観だけの見学となりました。
  オリジナルは奈良時代の721年、興福寺の創建者である藤原不比等の一周忌に、時の
 天皇の命で建てられたということです。鎌倉時代に再建されたものですが、創建当時
 の奈良時代の建築の特徴を残し、力強さの中にも優雅な雰囲気を醸し出しています。
  そしてこの北円堂の内部にあるご本尊他の仏像も、国宝として有名です。こちらは
 毎年春と秋の特別公開で鑑賞できるそうですので、またの機会に訪れたいと思います。
 こちらも図録の写真で見る限り素晴らしいの一言。(当たり前やん、国宝やで。by妻)

  

  中央に鎮座するのが、北円堂のご本尊である弥勒菩薩の木彫仏像です。こちらは鎌倉
 時代の著名な仏師運慶さんの力作です。弥勒菩薩なのに「菩薩(悟りを開く前でありな
 がらも仏に仕える身として衆生の苦しみを救う存在)」の姿ではなく、悟りを開いた後
 の仏の姿、すなわち「如来」の姿をしています。それだけでもちょっと異色な作品みた
 いですね。ちなみに仏教界の最高ランクが悟りを開いたお釈迦様や、極楽浄土で悟りを
 開いたとされる阿弥陀様や薬師様などの「如来(にょらい)」であり、悟りを開くまで
 はいっていないが、仏教世界で二番目のランクの仏様が「菩薩(ぼさつ)」と呼ばれて
 いるということです。観音様も分類としては「菩薩」の一人みたいですね。
  そういえば薬師如来とか阿弥陀如来といった如来様たちの像に似ています。しかし、
 ユニークなだけでなく、均整がとれた安定感があって、優雅さの中にも威厳のある表情
 が見て取れ、とても感動的です。
  さらに、この弥勒菩薩像の左右の背後にある仏像も、チーム運慶?の手になる国宝の
 木彫仏像です。右側が「無著(むじゃく)菩薩立像」、左側が「世親菩薩立像」です。

     

  こちらもチーム運慶の作品で、鎌倉時代の木彫仏像でも有数の傑作と目されています。
 弥勒菩薩様があたかも如来の姿で「いかにも仏様」というイメージなのに対して、この
 2つの菩薩立像は、とても人間的な雰囲気と表情をしています。北インドに実在したと
 いう(大乗)仏教伝道に尽力した高僧の兄弟がモデルだそうです。無著菩薩が兄、世親
 菩薩が弟なのだそうです。この兄弟、元々は上座部仏教(現在東南アジア・スリランカ
 に広まった主に修行による悟りを目指す教え:小乗仏教)の信者でしたが、兄の方が先
 に大乗仏教(かつての中国や今の日本に広まった人々の救済を目的とした教え)に帰依
 し、兄の説得で弟も大乗仏教に宗旨替えしたそうです。仏教は平和の教えだという認識
 ですが、それでも宗派争いはあったのですね。まぁキリスト教やイスラーム教のような
 殺し合いまではあまりなかったのでしょうけど、どっちが正しいか、というのはやはり
 あったみたいです。人間、細部にこだわるとそうなってしまうのかな。
  おっと脱線しましたが、この菩薩様兄弟は、立っているからなおのこと人間のようで、
 とても味わい深い表情をしています。「いい味を出してる」という感じです。
 (いい加減なこと言わんとき。それより、実際に見てもいない仏像のことをダラダラと
 書いていてもしゃあないで。先いこ、先。by妻)
  確かに。ではこの後は興福寺の有名な五重塔、東金堂、そして興福寺の所蔵する国宝
 や重要文化財の作品を集めた「国宝館」を見学いたします。・・・続きは次回。 
 (なんや、ケチやの~by妻)