Bonne(ボンヌ)のブログ

死別者ですが余生は少しでも楽しく

ブラーヴォ! マエストロ!

  なんや?いきなり・・・(by妻)


  はい、今日はNHK交響楽団のコンサートに行ってまいりました。と言いますのも・・・ 

  NHK交響楽団(以下「N響」と省略)になじみの深い世界的な名指揮者、御年95歳の
 ヘルベルト・ブロムシュテットさんが、なんと大曲マーラーの交響曲第9番を演奏する
 と聞き、オッサンはすかさずチケットを購入していたのでした。(安い席やな。by妻)


  開演時間は午後6時。もう夕闇迫るどころか、夜の雰囲気です。日が暮れるのが早く
 なりましたね・・・渋谷のNHKホールはこの演奏会を聴きに来る方々で賑わっています。

  ブロムシュテットさんは、1927年の北欧(スウェーデン?)生まれ、第二次世界大戦
 を覚えていらっしゃる、ほぼ最後の世代です。音楽どころではなかったあの頃に比べれ
 ば現代は幸せですね・・・あの某野蛮人の国さえなければ・・・


  この日の演目はただ一つ。オーストリアの誇る偉大な作曲家マーラーの最後の交響曲
 であり、彼の遺言ともいうべき魂のこもった名曲です。第9番とはいうものの、その前
 に未完の交響曲「大地の歌」がありますので実質的には10番目の交響曲ですが、本人
 が未完の「大地の歌」にナンバーを付けなかったので、この最後の交響曲が第9番の名
 を冠することになりました。ベートーヴェンも、ブルックナーも、マーラーも、交響曲
 のフィナーレは第9番となり、いずれも孤高の名作となっているのはおそらく偶然では
 ないでしょう。ベートーヴェンを越えることは、王選手のホームラン記録を越えること
 のようなものだったに違いありません。(は?よぅわからんのやけど・・・by妻)


  しかし全曲ぶっ通しで約90分近くかかる大曲を、95歳のマエストロが振るというのは 
 凄いことです。オッサンは57歳ですが、マーラーの交響曲第9番のスコアを覚えること
 は不可能です。(そらレベルが段違い平行棒やで・・・by妻)  


  予定より10分ほど遅れて、マエストロが入場してきました。場内割れんばかりの拍手
 です。燕尾服を着ていますが、コンサートマスターに支えられて指揮台に向かう姿は、
 ちょっと痛々しい・・・しかしさすがは百戦錬磨?のマエストロ、指揮台の椅子に座る
 やいなや、颯爽とタクトを振り上げます。場内は水を打ったように静まり返ります。
  張り詰めた空気の中を、低弦のさざめくようなフレーズが静かに響き渡り、ハープの
 弦をはじく音、そしてミュートを使ったトラペットが参入、たおやかな主題のメロディ
 ーをヴァイオリンが、対旋律をふくよかなホルンが奏で始めます。ブロムシュテットさ
 ん、椅子に座りながらも上半身を大きく使ってオーケストラに指示を出しています。
 これが95歳の老人とは思えないほどの生き生きとした躍動感なのです。信じられん・・・ 
 大編成のオーケストラですので、ものすごい迫力です。N響ってこんなに巧かったっけ?
 (失礼) ホルンのソロもフルートのソロもほぼ完ぺき、トラペットやトロンボーンの
 金管勢もメリハリの利いたクリアな音です。そして弦楽器、こんなに巧かったっけ?
 ブロムシュテットさんがこの曲に込めた思いを、オケのメンバーがしっかり受け止めて
 いるのは間違いないでしょう。これは名演だ・・・ひょっとしたら歴史的な・・・


  ちょっと長い曲ですが、今は亡きロリン・マゼルさんの指揮でバイエルン放送交響楽団
 の演奏をご参考までに・・・


  途中は端折りますが、この曲の白眉は最終楽章です。オッサン、初めて聴いた時には
 呆然としてしまいました。はっきり言って歴代のクラシック音楽の中でもベスト10には
 確実に入る優れた名曲です。記事を書いているだけで、もう痺れる~(アホ)


  その第四楽章だけ聴いてみたいという方には、ベルナルト・ハイティンクさんの指揮
 によるアムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団の演奏をどうぞ。泣いちゃいますよ。

  はい、オッサン、曲の途中で涙を流していました・・・目が小さいオッサンは、涙が
 あふれやすいのです(隣の人に悟られんようにせんとな。by妻)。
  長い曲なのですが、時間の経つのを忘れてしまうほど感動の連続でした。フィナーレ
 はどこか人生の終わりに向けて静かに歩んでいくような思いにさせられてしまいました。  
 最後には弦楽器だけになり、天国に向かう階段を一段ずつ登っていくような錯覚に・・・
 最後の一音が空気に溶け込むように消えていっても、マエストロは棒を下ろしません。 
 なんともいえない余韻が会場を包みます。
  しばらくして、マエストロが弛緩したように手を下ろすと、場内は割れんばかりの大
 拍手喝采です。禁止されているのにブラヴォーを叫ぶ輩もいました。もう観客の皆さん
 狂喜乱舞の状態です。N響公演では演奏終了後の撮影はOKとなりましたので、オッサン
 はさっそくマエストロの舞台を撮影しました。

  おっと、この舞台の上に吊るされた尋常ではない数のマイクはなんだ! きっとこの
 演奏が歴史的名演になることを予測して、NHKが録画・録音をしているのでしょう。
 いつかテレビで放送するのではないかと思います。録画しなきゃ・・・

  マエストロはコンサートマスターに支えられて指揮台を降ります。オケのメンバーも
 総立ちでマエストロに敬意を表しています。素晴らしい演奏を有難うございました。
  
  オーケストラメンバーが退場した後も拍手は鳴りやまず、マエストロは二度も舞台に

 出てきてくれました。足が不自由なようですので、だいぶ無理をされていたのかも。


  そうそう、オッサンが転勤で宮崎にいた頃、宮崎市にドイツのバンベルク交響楽団の  
 演奏会があり(地元テレビ局主催の音楽祭に出演)、当時89歳だったブロムシュテット
 さんが登場し、ブルックナーの交響曲第7番(先日ラトルさん指揮のロンドン響で演奏
 された曲)の演奏を宮崎市のメディキットホールで鑑賞しました。
  そうか、シューベルトの交響曲第7番(未完成)とブルックナーの7番だったな。今
 思えばすごいコンサートでした。しかも、主催者のテレビ局の方からご招待されたので
 無料で鑑賞させて頂きました😆、有難うございました、UMK(テレビ宮崎)様・・・



  その時はまだマエストロはご自分で歩いていて颯爽としており、オッサンが「ブラー
 ヴォ、マエストロ!」と叫ぶと、こちらに振り向いて、オッサンの方に指をさして応え
 てくれました。
  あれから6年、さすがに歩く姿は痛々しいですが、演奏そのものは全く衰えておらず、
 それどころか凄みを感じるほどでした。凄いよなぁ~、並の人間ではない。


  そうだ、また思い出した。オッサンが高校生の頃、NHKのTV番組「N響アワー」
 に、当時N響の常任指揮者だったブロムシュテットさんがよく登場していましたよ。
 本当にすごい指揮者だなぁ、これからもお元気で、無理なくご活躍されますように!


  今日はいい音楽を聴けて良かった・・・(たまには真面目な記事を書くんやな。by妻)