2015年GW フランス・ドイツの旅 ⑮ブルゴーニュ・ワインツアー その1
このところ雨がちでジメジメと暑苦しく、鬱陶しい日々が続く関東地方。西の方では
早くも梅雨入りだとか、まだ5月中旬なのに。ただでさえマスク着用でムレそうなのに、
こんな天気が続いては不快指数も上がってしまいますね。梅雨が長いのもイヤだけど、
早く梅雨明けして猛暑到来が早くなっても困りますね。快適な気候の期間が、だんだん
短くなってきているように感じます。
さて呑気に昔の旅行の記事を続けます。今回からはワイン産地であるブルゴーニュの
観光編になりますので、かなりオタク度の高いマニアな内容になりそうです。興味のな
い方にとっては「何じゃこら?」みたいな部分も多くなりますが、何卒ご容赦を。
2日目は、現地在住の日本人の方(ワインビジネスか飲食関係に携わる方)が日本語
でブルゴーニュ地方の有名な葡萄畑や生産者(ドメーヌ)に案内してくれるという、実
に有難いツアーに参加します。しかも参加者の希望をある程度聞いたうえでアレンジを
してくれるという、半オーダーメイド型なのです。日本から電子メールで申し込んだ時
には私一人だけでしたので、完全オーダーメイドで100%希望を叶えてくれるかも?と
期待していましたが、直前になって2組の方々(若いカップルと、中年のグループ)が
参加するという事で、それぞれの希望をミックスしてアレンジされることになりました。
他の参加者は、ブルゴーニュ観光の中心地であり、ワインビジネスの集積地でもある
ボーヌの街(ディジョンからは電車で約30分程南に行ったところ)に宿泊していますの
で、ボーヌで合流予定です。
2日目の朝、ホテルで簡単なコンチネンタル・ブレックファストを取り、フロントで
荷物を預かってもらって、ホテルの前でツアーガイドを待ちます。8:30に宿泊ホテルに
迎えに来てくれることになっていまして、ツアー終了後はその日に宿泊予定のオーベル
ジュ(宿泊施設付きのレストラン)まで送って貰う手はずになっています。本当は荷物
も積んでもらえると助かるのですが、他のお客さんもいるので当然それはNGでした。
したがって、ツアー終了後にまたこのディジョンの駅前ホテルまで戻り、荷物をピック
アップしてから次の宿泊先に向かうということになります。まぁ仕方ないです。
ほぼ予定通りにガイドの若い男性(30歳台前半かな?)がバンに乗ってやってきまし
た。挨拶とスケジュールの確認をしてから、早速車に乗り込みます。
これまでにブルゴーニュには妻と2回来ていますが(自慢すんな)、いずれも電車と
タクシーでの移動で(しかも1回はパリからの日帰り)、かなり時間と労力がかかりま
したが、今回はすべてお任せ。移動が楽なだけでなく、現地事情に精通した「通訳」も
付いてくれるのです。これは本当に有難いです。お値段も(いくらか忘れましたが)、
リーズナブルでした。これは同行者がいたので「割り勘効果」もあったと思いますが。
今でもこういうサービスはあるのかな?コロナの影響で中止になっているのは間違いな
いですが、コロナ騒動が明けたら再開してほしいですね。
ディジョンの街を離れると、すぐに一面のブドウ畑が広がります!車の中から撮影を
しましたので、ガラス越しで見にくくて済みません。
ブルゴーニュ地方の主要な葡萄畑は、コート・ドール(黄金の丘陵)と呼ばれる、
ディジョン(Dijon)の街の南から、南北に細長い帯状の地帯に集まっています。北側
をコート・ド・ニュイ地区(中心地はニュイ・サン・ジョルジュ:Nuit-St-Georges)、
南側をコート・ド・ボーヌ地区(中心地はボーヌ:Beaune)と呼んでいます。
下の図に示すように、この細長くて狭いエリアがいわゆる高級ブルゴーニュワインの
生産地です。コート・ドールという名称はディジョンを中心とした行政区(県)の名前
にもなっているのですが、秋の収穫時期に丘の斜面全体に植えられたブドウの葉が黄金
色に美しく染まることから、このようなロマンティックな?名前がつけられたそうです。
ちなみにこのコート・ドールのすぐ南のコート・シャロネーズ、さらに南にヌーヴォ
ーで有名なボージョレ地区があり、コート・ドールのワインに比べるとはるかに安価で
お買い得なのですが、やはりブルゴーニュに来たからにはコート・ドールの一流どころ
を見学したくなるのがワインオタクです。
まずはディジョン(Dijon)からブルゴーニュ観光の中心地、ボーヌ(Beaune)
まで、一直線に向かいます。普通は丘の麓を走る国道を通っていくのが早いのです
が、なんせワインツアーですからそんな野暮なこと?は致しません。丘陵の中腹の
葡萄畑を貫く狭い道(ルート・ド・グラン・クリュ、通称「特級畑街道」)を駆け
抜けます。
車窓からコート・ド・ニュイ地区の有名な村、ジュヴレ・シャンベルタン、モレ・
サン=ドニ、シャンボル・ミュジニ、ヴージョ、ヴォーヌ・ロマネ、ニュイ・サン
=ジョルジュ(いずれも有名な特級畑や一級畑のある村)を通り抜けて、ボーヌの
街に向かいます。車窓から有名な村や畑の看板が見えるたびに、「おぉ」と感嘆の
声を上げるオッサン。かなり恥ずかしいで・・・(by妻)
一般の方には、もう何がなんだか訳がわからないですね。
・・・なんでワインのことに「村」の名前が関係あるんだよ?
・・・特級畑とか一級畑ってなんだよ?
では最低限の解説を。(詳しく知りたい方以外は退屈ですので飛ばしてください)
ブルゴーニュに限らず、フランス人はワインの優劣を「土地」で決めてきました。
その「ハシリ」は中世の修道僧たちで、彼らは土地の条件(土壌、気候、日当たり等)
によって葡萄の出来に明確な差があり、ワインの品質に大きく影響することを知って
いたため、常に出来の良い葡萄・ワインを生み出す場所が有名になっていきました。
その後王侯貴族たちがそうした優れたワインを追い求めて更にステイタスがあがり、
(フランス革命後に一時廃れたものの)歴史を積み重ねていくなかで、生産者たちの
努力により、優れた畑、優れた畑を擁する村が名声を築きあげてきました。ふーん。
そして、それを決定づけたのが20世紀前半になって制定された「原産地呼称法制度
(AOC)」です。フランスではアペラシオン・ドリジーヌ・コントロレと呼ばれるもの
です。これによりワインの生産地ごとに、その地域のワインの特徴となる品種を定め、
品質を担保する基準(1ヘクタール当たりの生産量上限等)を課し、さらにブドウを
生産する土地の優劣によって格付けを行いました。こうして、特色ある優れた生産地
のワインの品質を担保することで、その生産地の名前を冠したワインがさらに名声を
博していくことになります。要するに、正真正銘、その土地でできた優れたワインを
保証することになるため、消費者には安心、生産者もブランド化の恩恵に浴すことが
できるというわけです。あったまいい~。でも本当は、偽造ワインが横行したので、
それの対策として始まったのですが、結果的には最高のマーケティング戦略となりま
した。・・・オイ、オッサン、長いぞ(by妻)。はい、スミマセン。もう少しです。
それで、ブルゴーニュ地方のワインは、AOC法制度で以下のようなカテゴリー分類
が定められました。上にいけばいくほど、産地が細かく特定され、葡萄の栽培方法と
ワインの醸造における基準も厳しくなります。
最も「基準が緩い」格付けが「地域名」ワインです。ブルゴーニュ地方で採れた葡萄
を使って、定められた品種(赤は主にピノ・ノワール、白は主にシャルドネ)で作られ、
一定の基準を満たしたものは、ACブルゴーニュ(Appellation Bourgogne Controlee) を
名乗ることができます。オッサンがよく購入するブルゴーニュワインはこれのことです。
お茶に喩えると「静岡県のどこかで造られたお茶」みたいな感覚です。
ちなみに「シャブリ」とか「ボージョレ」とかも、ブルゴーニュ地方の一部の地域で
ありますが、レベル的には「地域名ワイン」に位置付けられます。
主に斜面の下の平坦な水はけの悪い場所や、斜面の上の標高の高くて寒い場所にあり、
品質の高いワインができにくいところですが、ここに該当する畑の面積が一番広いです。
この地域名の一つ上のランクが、「村名」ワインです。(ワインオタクは「そんめい」
と呼んでやや軽視しています。)そうです、やっと話が通じますね。ブルゴーニュ地方
のなかでも特定の「村」で生産された、さらに厳しい基準をクリアしたワインなのです。
ジュヴレ・シャンベルタン村とか、ボーヌ(村じゃないけどランクとしてはここに該当)
という特定の場所(フランスではコミューンと呼んでいるようですが)で作られたもの
です。一般に「地域名ワイン」より品質が高く、生産量も少なく価格も高くなります。
しつこいですがお茶に喩えると、「名産地である静岡県の掛川市で造られたお茶」、と
いう感覚です。
そしてさらに上があります。ここまでくると「畑」レベルです。ブルゴーニュの著名
な村のなかには、特に優れた場所とみなされた区画(畑)を「1級畑」「特級畑」とし
て区別しているところがあります。緩やかに南~南東に向いた斜面上の狭い区画にあり、
ブルゴーニュの中でもごく一部の恵まれた場所しか選ばれていませんので生産量はごく
僅かです。そうです、ワインマニアが狂ったように探し求めているのは、まさしくこの
領域なのです。品質が高いのはお墨付き、生産量も少なく、誰もが欲しがるので入手は
困難を極め、超高値という訳です。(ホンマ、狂っとるわ。by妻)
ちなみに、ブルゴーニュのコート・ドールの「村」の名前は、実はその村の中にある
著名な特級畑や一級畑の名前をくっつけて命名されています。元々の田舎の無名の村の
名前よりも、もっと有名な「畑」の名前にあやかろうというわけです。
ジュヴレ村は、「シャンベルタン」というナポレオンが愛好した超有名な特級畑の名
を借用して「ジュヴレ・シャンベルタン村」に改名し、ヴォーヌ村は、世界一有名な畑
「ロマネ・コンティ(当然特級畑)」の名にあやかって「ヴォーヌ・ロマネ村」となり
ました。
こんな理由で、フランスワインのラベルを見ると、AOCの基準を満たしたものであ
れば必ず、”Appellation ✕✕✕ Controlee ”と書かれています。(✕✕✕にAOC法制度
で規定された生産地の名称が入ります。)
下のワインは、ブルゴーニュの「村名」格付ワインの「ジュヴレ・シャンベルタン」
というワインですが、飾り文字で派手に「Gevrey-Chambertin」と銘柄名が書かれた
部分の真下に小さく、”APPELLATION GEVREY-CHAMBERTIN CONTROLEE" と書か
れているのがおわかりでしょうか?ラベルの見方がわかるとちょっと面白いのです。
あれ? 誰も読んでくれていなかったりして・・・空回りしていたらスミマセン。
しかし、もしご興味があれば、上記のことをなんとなく覚えて頂いていますと、これ
からの話が多少分かりやすいのではないかと思います。
先ほど示したブルゴーニュの地図上に、上記の4つの格付けの畑の分布状況が示され
ていますので、ご参考までに。
まぁ「前振り」だけでこんなに辟易するとは思わんかったわ・・・by妻。
車窓から見えたコート・ドールの村の風景です。平地の畑はほぼ「ACブルゴーニュ」
か「村名」ワインとなり、集落の背後にある斜面の畑が「一級畑や特級畑」になること
が多いです。南東向きの斜面は日当たりが良く、水はけも良いということなのでしょう。
斜面にも緩やかな場所と、険しい場所があります。また土壌も場所によってかなり
異なるようです。土の色や、混じっている石の量など、見た目で違いがわかるところも
あります。面白いですね。
なんだか頭でっかちの記事になってしまいました。
この後はまずワインビジネスの街、観光都市ボーヌを散策します。畑めぐりは、
その後の予定です。(なんだか今回のシリーズも長くなりそうやな・・・by妻)
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