Bonne(ボンヌ)のブログ

死別者ですが余生は少しでも楽しく

2020年ボルドーワイン試飲会・・・ちょっと長め・・・

  今日は休暇を取って、ワインのインポーターさん主催の2020年ボルドーワインの試飲
 会に行って参りました。(そんな理由で会社を休むなんて、大概やな。by妻)
  コロナの規制が少し緩んだのを機に、主催のインポーター(輸入業者)さんが緊急で
 開催日を決めて案内をしてくれました。有難うございます。
  
  ということで、今回の記事はワインに興味のない方にとっては何も面白くないマニア
 な記事となりますので悪しからずご了承ください。


  ボルドーワインは、収穫・醸造後に一般市場にリリースするまで約2年~2年半ほど
 生産者(シャトー)で樽熟成をしますので、2020年のヴィンテージが世の中に出てくる
 のは2023年の春なのですが、ボルドーワインには昔から「プリムール」という先物取引
 の習慣があり、醸造・発酵が終了した後一定期間たった頃に、一定量を売り出す仕組み
 ができています。毎年ヴィンテージの年の翌年の春にプリムール販売が始まるのですが、
 今年はコロナの影響でリリース(及びシャトーからの売り出し価格の発表)が遅れてい
 ました。ようやく最近プリムール商戦が再開されたので、このインポーターさんは本場
 ボルドーからいくつかのシャトーのワインのサンプルを空輸してもらい、2020年プリム
 ールワインの試飲会を開催してくれたという訳です。
  
  大半のワインがちゃんとシャトーで瓶詰をした状態で提供されました。壮観です。
 ボルドーワインのトップクラス、メドック地区の格付けワインも10種類提供されました。
 試飲会の参加料金は2,200円ですから、採算度外視ですね。つまり、この試飲会の後で、
 プリムールワインを買ってくださいよ、という無言の圧力があるということです。
 (別にそんなことはないと思うで。欲しかったら買えばいいだけやん。お金がないから
 そういう被害妄想になるんやで。by妻)


  こういうことができる理由としては、「プリムール」の出荷時に、多くのシャトーが
 取引先(ネゴシアンという仲介業者や輸入業者)に試飲用サンプルを提供し、購入時の
 参考にできるようにしているくれるからです。このインポーターさんは、約30年前から
 ボルドープリムールに参入してきた実績があり、その信頼のお蔭でボルドーの生産者や
 仲介業者がプリムールの試飲用サンプルをボトルに詰めて日本まで提供してくれるとの
 ことです。本当にビジネスも信頼関係の積み重ねがあってこそですね。
 (注文を入れる→売ってくれる分をきちんと買う→適正な価格で販売し、適正な利潤を
 得る→その資金で再び注文を入れる・・・の繰り返しが基本です。今は売り手が優位な
 状況ですから尚更ですね・・・)


 



  ボルドーワインの先物取引は、経済的な投資としても魅力があるようで、うなるよう
 にお金が余っているお金持ちや資産投資家たちが、飲むわけではなく資産運用のために
 大量にボルドーワインのプリムールを買い、儲けているという側面もあるようです。
 そのような方々は資金力にモノを言わせて大量に購入するので、そうした方々の動きが
 (残念ながら)市場に大きな影響を与えているようです。つまり、高級品やプロの評価
 の高いワインの価格が天文学的値段に跳ね上がるという現象になって現れ、お小遣いで
 細々と1本単位でしか買えないサラリーマン愛好家には手が届かなくなるという訳です。
 そうそう、アングロサクソン系の人たち→我らが同胞のお金持ち→C国人のけた外れの
 お金持ちという感じで参入者が倍々ゲームのように増えているので、価格の上昇も凄ま
 じいものになってきております。
 (ずいぶん恨みがましい言い方やな。僻んでも買えんものは買えんで。by妻)


  さて、能書きはそのくらいにして、さっそく試飲会に参ります。
  平日の午前10時開催なので、昼間っから飲酒をする後ろめたさがありましたが、会場
 (都心のビジネスセンターの一室)には招待されたと思しきプロの方20名と、私のよう
 にこのインポーターさんからボルドーワインのプリムールを購入したことがある一般の
 愛好家の方々20名が集まっています。一般人は30代から50代くらいの男性が多く、中に
 は夫婦で参加している人たちもいました。いずれにせよ私のように「ワインにハマって
 いるもの好きな方々」に違いありません。


  私は初めての参加ですが、今回はコロナ感染防止対策を考慮して着席での試飲です。
 あらかじめ5脚のグラスとお水が用意され、インポーター社員の方々がボトルを持って
 お客さんに注いで回るという形式でした。従って、決められた順番で、時間を気にしな
 がらの試飲となり、ちょっと窮屈な感じでした。

  約2時間で40種類のワインを試飲するので、かなりキツイです。しかも、出来立ての
 ワインですからまだ渋くて、口の中に入れると上あごが乾くような感じがします。
 1種類30mlくらいでしたので、40種類で1.2リットルにもなりますから、全部飲んでし
 まっては酔っぱらいます。ですからこのような試飲会では、テイスティング後にワイン
 を吐き出すこともOKです。(吐き出し用のカップとバケツ?が用意されています。)
 オッサンも「勿体ない」と思いつつも、酔わずに試飲に臨むために半分くらいは吐き出
 しました。(逆に言えば、半分は飲んでるわけやんな。貧乏人やから。by妻)


  上の写真のように、5つのグラスに注いでくれて比較できるようになっています。


 だいたい似たようなタイプのワインをグループに分けて、9回に分けて注いで頂きまし
 た。上の写真は3グループ目。メドック地区格付けワインを中心にしたシリーズです。
 マルゴー村のシャトー・ラスコンブ(第二級格付け)と、そのセカンドワイン(選別で
 格落ちした葡萄や若樹の葡萄から造ったもの)、サン・ジュリアン村のシャトー・ラグ
 ランジュ(第三級格付け:サントリーが所有するシャトー)と、そのセカンドワイン。
 さらに同じくサンジュリアン村のシャトー・ベシュヴェル(第四級格付け)です。

  右端のボトルがラスコンブ、その隣がラグランジュのセカンド、ラグランジュ、さら
 にベシュヴェル(帆船の絵が人気)と続きます。もう2020年のラベルが貼られています
 ね。当然まだ市場には出ていません。店頭に並ぶのは2023年の4月頃になると思います。
  そんなワインをテイスティングできるなんて、なんだか特権階級になった気分ですね。
 (勘違いしたらあかんで。2000円払って飲ませて頂いているだけやからな。by妻)


  肝腎のテイスティングですが、私はプロではありませんし、こういった若いワインを
 並べて試飲した経験がほとんどありませんので、違いを見極めるのは難しかったです。
 ただ、思ったより渋くないので飲めないことは無く、ものによってはこの段階でも美味
 しいと感じてしまうほどバランスが良く完成度の高いものもありました。色は黒に近い
 紫色なのでちょっとひるんでしまいますが、思ったより香りも味も近寄りやすい感じが
 しました。最近は若くても飲めるような造りになってきているという感じですね。
  ボルドーの赤ワインは、主要4品種(カベルネ・ソーヴィニヨン、メルロー、プティ・
 ヴェルド、カベルネ・フラン)のブレンドが基本なので、その配分比率によって味わい
 が異なるところが楽しいのですが、この年のメドック(水はけのよい痩せた砂地土壌が
 多いためカベルネ・ソーヴィニヨンの植栽比率が高い地区)は、なんとカベルネ・ソー
 ヴィニヨンとメルローの比率が同じくらいか、メルローが若干少ない程度という珍しい
 ブレンド比率でした。ということは、2020年はメルローの出来が比較的良かったという
 ことだと思います。メルローはカベルネ・ソーヴィニヨンに比べて肉付きが良く柔らか
 さを出しやすいと言いますので、その特徴がワインにも出ているのかもしれません。
 ちなみにラスコンブがC/Sが55%、メルロ40%、プティ・ヴェルド5%というブレンド。
 ベシュヴェルはC/S51%、メルロ45%、P/V4%と通常よりもメルロ比率が高いようです。
 一方ラグランジュはC/Sを74%も使っていて、カベルネ勝負に出ている感じです。この
 違いがテイスティングで分かれば楽しいのでしょうが、私はそこまでは分かりません。


  しかしメルローの出来が良いとなると、期待されるのはボルドーの貴族たるメドック
 (ジロンド川沿いの砂地)よりも、ボルドー市街地に近いペサック・レオニャン地区や
 右岸地区と呼ばれるドルドーニュ川右岸にあるサンテミリオン地区(粘土質の土壌)の
 ワインの出来が良いのではないと思われます。というのも、粘土質の土壌に合うという
 メルローの植栽比率が高いからです。  

  上の写真はペサック・レオニャン地区のワインたち。右端からラトゥール・マルティ
 ヤック、カルボニュー、ドメーヌ・ド・ジュヴァリエ、パプ・クレモンです。
  パプ・クレモンはC/Sとメルロが50%ずつ、確かにメルロ比率が高いとふくよかで、
 華やかさが感じられます。しかしその他のワインは意外にC/S比率が高く、メドックの
 ベシュヴェルのほうがメルロをたくさん使っているのが驚きです。


  さすがにサンテミリオンは、もともとメルローとカベルネ・フラン主体の植栽なので
 メルローが多いです。シャトー・ラ・ドミニクは85%がメルロー、C/Fが12%、C/Sが
 3%というブレンドです。有名なシャトー・ヴァランドローはメルロー90%と、さらに
 メルローを多く使っています。かなりハイテンションな感じ?の味わいでした。 
  下の写真の右端のボトルがラ・ドミニク、左から2つ目がヴァランドローです。 

  あ、右から3つ目のボトルが楽しいラベルですね。”Bad Boy”という変な名前がついて
 いますが、その訳は・・・              
  ボルドーワイン評論の権威である米国のロバート・パーカーJrさんが、このワインを
 作るジャン=リュク・テュヌヴァン氏のことを「サンテミリオンの不良少年(Bad Boy)」
 と自分の評価誌(The Wine Advocate)で書いたのですが、それを見たテュヌヴァン氏
 は、自分の造るワインにその名前をそのままつけて世に出したという次第です。お茶目
 ですね。もちろんパーカーさんも「不良少年」を非難したわけではなくて、伝統と常識
 にとらわれず、極少量生産の個性的なワインを造りだしたテュヌヴァン氏をリスペクト
 してジョークのつもりで書いたのだと思います。
  テュヌヴァンさんは脱サラでワイン造りを始めたのですが、大規模なシャトーでの昔
 ながらの伝統的造りではなく、自分のこだわりのやり方で「健康的で濃くてパンチ力の
 あるワイン」を目指しました。畑の規模が小さいのですべてを自分の思い通りにできる
 という、いわばハンデを逆手に取ったやり方で実に個性的なワインを生み出しました。
 そのワインは特にイギリス系の伝統的なワインジャーナリストの眉をひそめさせるほど、
 バランスが取れていない(濃すぎる、甘すぎる、酸度が低すぎる)と批判されました。
 私も正直言うとこういうタイプは好きではないのですが、生産量を落として手をかけて
 いる分だけ品質が高いのは認めます。ところが、パーカーさんのようなアメリカ人は、
 どうもこういうリッチでパワフルなワインが大好きなようで、テュヌヴァンさんのよう
 な新参者の造る個性的なワインを評価誌でべた褒めします。テュヌヴァンさんたちは、
 自宅の狭い(ガレージのように小さい)醸造所でワインづくりをするため、彼らの作る
 サンテミリオンのワインは「ガレージワイン」とあだ名をつけられました。
   "Bad Boy" のラベルには、「ガレージはこちら」という立て札が描かれていますが、
 これもテュヌヴァンさんのジョークですね。今ではテュヌヴァン流のガレージワインは
 かなりの種類があるようで、サンテミリオンの一つのスタイルを確立したようです。


  「シャトー・ヴァランドロー」は、そんな不良中年テュヌヴァンさんが、満を持して
 サンテミリオン地区の格付け畑を購入し、彼が精魂込めて品質向上を図った成果により
 サンテミリオン地区の第一特別級というトップクラスのワインに認定されました。
  下の写真中央が、シャトー・ヴァランドローです。右側がそのセカンドワインです。
  左のワインはメドック地区の最も有名なポイヤック地区にある第二級格付けワイン、
 シャトー・ピション・ロングヴィル・バロンですが、今やそうした伝統ある高級ワイン
 とも肩を並べる品質(と高い価格)になっています。やったね、テュヌヴァンさん。 

    

  聞くところによると、このテュヌヴァンさんはこの試飲会を開催した日本のインポー
 ターに長年協力をしてくれていて、コロナ以前の年の日本での試飲会にはゲストとして
 招かれ、試飲会のサポートを(もちろんワインの提供や現地での口利きも)してくれて
 いるそうです。今回はさすがにフランスから来る方はいなくて残念でした。
  ぜひ今度はテュヌヴァンさんのユーモアと情熱あふれるワイン話を聴きたいですね。
 (もちろん通訳が無いと困るやろ。by妻)


  さて最後は白ワインの試飲です。ボルドーには、ソーヴィニヨン・ブランとセミヨン 
 という2つの白ブドウを主に使った辛口白ワインもあります。赤に比べて知名度は低く
 (シャトー・オー・ブリオン・ブラン等一部を除いて)比較的安価ですので、お買い得
 と言えます。ちょっと酒質は強めですが、和食にも合うと思います。
  この試飲会には、辛口白の中心的な産地であるペサック・レオニャン地区のワインが
 数本提供されました。パプ・クレモン、ドメーヌ・ド・シュヴァリエは赤だけでなく、
 秀逸な白も作っています。2020年の白はリッチな仕上がりだそうですが、まだ若いので
 水のように透明な色で、まだお酒になっていないような感じでした。しかし、集中力が
 あってバランスが良く、高品質なワインに成長するだろうなとは思いました。


  いやぁ二時間ほどの時間で、約40杯も違う種類のワインをティスティングしたのは
 初めてですが、興味深い体験でした。すごく疲れましたけどね。半分くらいは吐き出し
 ていますが、出来の良いワインや高級そうな(滅多に飲めない)ワインはついつい飲み
 こんでしまいましたので、少々酔っぱらいました。(貧乏根性丸出しのオッサン。by妻)


  最後にインポーターの代表者がご挨拶をされ、私を含め参加者の皆さんは拍手で感謝
 の意を示しました。商売のためのプロモーションとはいえ、このコロナ禍の制約の中で
 これだけの数のワインを現地から取り寄せてこのような機会を作って頂いたので、感謝
 あるのみです。
  参加者にはこのインポーターの輸入する2020年のボルドー・ワインプリムールの事前
 優先販売のリストが渡されました。しかしながら、今年は有力シャトーのリリース(と
 価格発表)が遅れているので、高級銘柄のほとんどが価格未定の状態です。唯一、一級
 シャトーのトップ、シャトー・ラフィット・ロートシルトだけが孤高の存在のごとく、
 極少量のリリース(価格は税抜き1本で85,000円!)を発表していますが、今年は少し
 値段が上がりそうです。2万円を超えるとサラリーマンにはちょっと厳しいな。
  実は昨年(2019のプリムール)はコロナ元年ということもあり、シャトー側も価格を
 抑えて慎重に対応してくれたため、5年ぶりくらいの安値でした。(そのため私も少し
 買うことができました。)今では、コロナで飲食店の需要が落ちても、お金持ちがカネ
 に糸目をつけずに買ってくれることがわかったため、シャトーも強気のようです。さぁ
 今年の商戦はどうなるか?高みの見物です。(自分は買えないからな・・・by妻)


  しかし冷静になると、今、多少安く買ったところで飲み頃になるのは20年以上先です。
 その頃は私は生きていたとしても80歳手前です。ワインを飲める健康な状態かどうかも
 わからないですね。そう考えると、自分は一体何をやっとるんだ?という気になります。
 もうそろそろ新しいワインを買うのは控えたほうがよさそうですね・・・
 (我慢できるかいな?by妻)


  一般の方には全く興味のないことを長々と書いてしまい、スミマセンでした。
 次回からは通常モードに戻ります。(・・・いうても所詮旅ブログやろ。by妻)